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67.会話 風船の話

本日もこんばんは。

ヘリウムガスの風船って意外と値段するイメージがあります。

とあるクマさんもとあるピエロも高いと思っているんでしょうか。

「どうしました? ぼくのことをじっと見つめて。ハッ、もしや、ぼくのことが――」

「うるせえんですよ。その手に持っているものを見てコメントを考えていたんです」

「風船のことですか? 立ち寄ったお店でイベントが開かれていまして、こどもたちに無料でプレゼントしていたんですよ」

「一応訊いて差し上げますが、プライドはないんですか?」

「だって欲しいじゃないですか、風船!」

「魔王さんがいいなら私は何も言いませんよ」

「はい、これ勇者さんの分ですよ」

「割っていいですか?」

「なんでそういうこと言うんですかぁ。せっかくもらったんですよ?」

「この歳で風船を持って歩くのはちょっと」

「もっと幼かったらもらってくれました?」

「もっと幼かったら誤って紐から手を離していたでしょうね」

「結局もらってくれないんですね」

「風船を持って歩く勇者と魔王、見たいですか?」

「ぼくは見たいです」

「当事者には訊いていません」

「ぼくはともかく、風船を持つ勇者さんは見たいです!」

「風船を押し付けるのやめてください。いつものように馬鹿力で攻めたら割れますよ」

「うぐっ……。せっかくかわいい青色の風船にしてもらったのに……」

「そういうあなたは、また赤色なんですね」

「ぼくの好きな色ですからね。絶対赤色がいいと駄々をこねました」

「やめてください、恥ずかしい」

「好きなものは譲れません。たとえ相手がこどもだろうと」

「譲ってあげてください。こども相手に意地張るなんてみっともないですよ」

「勇者さんが勇者らしいことを言っている……」

「勇者ですからね」

「だいじょうぶですよ。まだいっぱいありましたし、ピンクや水色が人気で赤色は余っていましたから」

「不吉な色の風評被害ですかね。もらわれないなら作らなきゃいいのに」

「ぼくがもらいますから!」

「ひとつ減ったところで残りは廃棄されるだけですけどね」

「全部いただいてきました」

「うわっ。いまどこから出しました? ねえ?」

「もちろん、ひとつ目以外はきちんとお支払いしてきたので安心してください。正規ルートでの獲得です」

「どこから出したか教えていただいていいですか? どんなマジックですか? なにもなかったですよね? 背中から大量の風船――」

「細かいことはいいんですよ。見てください、この赤い風船の束を。ぼく、とってもはっぴーです!」

「いくつあるんですか、これ……。なんだか、風船で空を飛べそうですよ」

「誰もが一度は考える夢ですね。えへへ、見ていてください、勇者さん。えいっ」

「……ほんとに飛んだ……。あっ、そうだ、魔王さんは飛べるんでしたね」

「ですが、風船の力で浮かんでいるように見えるでしょう? ロマンですよ」

「見る分にはいいですね」

「風船の中に入っているヘリウムガスは空気より軽いんですよ。つまり、風船を持った勇者さんは空気より軽くなるのです」

「どういう理屈ですか、それ」

「どうぞ。きれいな青色の風船です。青色も人気だったので、ひとつだけですが……」

「いらないって言っているのに……」

「風船を持つ勇者さんが見たいというぼくのわがままですよ」

「……仕方ないですね。取り残された赤色の風船たちを助けてくれたお礼ということにしましょう」

「風船の恩返しですね」

「私は幼子ではないので離さずに持っていてあげます」

「ぼくもしっかり握りましたよ」

「そのようです。しぼむまでの短い間ですが、ロマンを持って歩くとしましょう」

「風船の中には夢が詰まっている。ヘリウムガスより素敵な説明ですね」

「つまりヘリウムガスは夢ということですよ」

「こどもには聞かせられない夢ですねぇ」

「それにしても、大量の風船を持つのが様になっていますね。お似合いですよ」

「ぼくにとっては褒め言葉ですが、よろしいですか?」

「お好きに」

「好きな色をたくさん抱えられてうれしいです。まるで薔薇の花束のようではないですか?」

「素敵な想像力ですね」

「……うーん、勇者さんの青い風船、やっぱりひとつだけじゃさみしい気がします」

「いえ、そんなことはありませんよ」

「そうですか?」

「隣を見れば、ね」

お読みいただきありがとうございました。

今度はヘリウムガスをおふたりに吸わせてみたい天目です。


勇者「しぼんできましたね」

魔王「勇者さんの胃袋がしぼんでくれたら食費が浮くんですけどねぇ」

勇者「……風船だけに、ですか。さむ」

魔王「でもぼくはいっぱい食べるきみが好き~って、なんで縮こまっているんですか?」

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