668.会話 サイボーグの話
本日もこんばんは。
人間と人外のふたり組が好きです。
「魔王さん、私はサイボーグ勇者になろうと思います」
「サ、サイボーグ勇者さんに⁉ ……って、なんですかそれ」
「腕にガトリング、足にターボ、頭にヘルメット」
「最後のやつは普通ですね」
「メカメカしい私はお嫌いですか?」
「どんなきみも大好きですが、どうしてサイボーグ勇者さんの発想になったのですか」
「人間は弱い生き物です」
「急にどうしました」
「すぐに死んでしまう人間を見て、こう考えました。強い人間にしよう、と」
「まあ、そうですね」
「光のような速さで走り、超強固なバリアを張り、水の中でも息ができる」
「スーパーマンですね」
「ちなみに、防御する時のセリフは『バーリア! はい攻撃は効きませーん!』」
「小学生?」
「こうして、世界を救うヒーローが生まれるのです」
「誰だってヒーローになれます。きみもその一人ですよ、勇者さん」
「あ、結構です」
「遠慮しちゃいけない人なのに」
「私は脇役の友達の知り合いの隣に住んでいる人の母親の娘の親戚の犬がいいです」
「人間ですらない」
「そこにいるだけで褒められたい」
「ぼくでよければ」
「あ、結構です」
「遠慮されちゃった」
「ちなみに、何も考えずに『バーリア』と言っているわけではありません」
「何も考えていなそうなお顔なのに」
「勇者がサイボーグになれば、より世界を救えると思ったのです」
「救う気あるんですか?」
「私にはないですよ」
「当代勇者は誰でしたっけ」
「私の隣にいる白いひとだったような」
「ぼくの隣にいる黒い人なんですよ」
「おかしいですね。それだと私ですよ」
「そうですね。きみなんですよ」
「私が強くなってもうれしくありません。その辺の人をサイボーグにしましょう」
「巻き込まないであげてください」
「よく考えてください、魔王さん。普通の激弱儚い命人間を強くしたらどうなります?」
「え? え~……、うーん、魔物の攻撃にも耐えられる?」
「まさしく。生存率が上がるのですよ」
「すばらしいですね。魔なるものによって壊される命が減るなんて歓喜です」
「全人類サイボーグ化計画はいかがでしょうか」
「実際は難しいでしょうね」
「もちろん存じています。とりあえず、ヘルメットだけ被せますね」
「すぐできるサイボーグ化」
「あ、装着BGMはセルフでお願いします」
「ウィーン、ガチャン! ヘルメット、ソウチャクカンリョウ!」
「やかましいな」
「勇者さんがセルフでって言ったのに」
「もっと近未来的な感じで」
「『ヘルメット装着完了。防御力二十パーセント増加。戦闘開始準備』」
「何が変わったんですか?」
「より高性能な人工知能になりました」
「魔王さんが滑らかにしゃべっただけ」
「戦闘補助もしてくれますよ」
「いいですね。あとは任せた」
「あくまで補助です。実戦担当は勇者さんですからね」
「それじゃあ、今までと変わらないじゃないですか」
「敵の数、最適な戦闘方法、敵のデータ収集など、効率よく戦えるようになります」
「ヘルメットに求めすぎですよ。泣いちゃっても知りませんからね」
「いざという時はぼくが助けますから、泣かないでくださいな」
「いえ、ヘルメット及び人工知能が」
「補助役なのに」
「『もう無理! 勝てない! 敵多すぎて解析が間に合わないよう! わあん!』」
「気弱な人工知能ですね」
「あーだこーだ言いつつも、なんだかんだで切り抜けるサイボーグコンビ」
「楽しそうな二人組ですね。片方は人工知能ですけど」
「気弱な人工知能ですが相方がピンチになると身体の操作権限を移して戦いに参加する」
「おや、流れが変わりましたね」
「そういうわけで、魔王さん。あとは任せた」
「あ、ぼくがその枠だったんですね」
お読みいただきありがとうございました。
みなさまご一緒に、バーリア。
勇者「そもそも、なんで勇者は人間なんですか?」
魔王「それはあの、結構深い話になるのでその、えっと」
勇者「選んだ時にハイパースーツのひとつでもくれればいいのに」
魔王「ジャンルがSFになりますね」