表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
663/702

663.会話 夏休みの話

本日もこんばんは。

最近、夏が怖いです。暑すぎて。

「この時期になると、ぼくはついそわそわしてしまうのです」

「落ち着けばいいと思いますよ」

「なぜなら、そう、夏休みシーズンだから! いえあ!」

「魔王に夏休みとかあるんですか」

「ないですよ。気分だけです」

「さみしいことを言いますね」

「そういう勇者さんだって、夏休みないじゃないですか」

「こうしている間にも魔なるものが湧いてくるせいでね」

「弾ける汗のように魔物の身体を滅しましょう」

「爽やかに言わないでください」

「鏡をお使いになるのもよいかと」

「何に使うんですか? 魔王さんの毛根消滅?」

「太陽光を魔物に照射して滅するのです。ぼくの毛根には当てないでくださいね」

「それにしても、なんだかいつもより魔物が多くありませんか?」

「夏休みで浮かれているのでしょうね」

「え、魔物に夏休みがあるんですか」

「というより、常時休みで欲望のままに生きている存在ですからね」

「びっくりした。私の話かと思った」

「勇者さんはたまに仕事するじゃないですか」

「そうですね。たまにね」

「暖かくなると出てくるんですよ。ほら、学校から来る不審者情報も増えるでしょう?」

「え? いや、何の話ですか」

「どいつもこいつも浮かれて人間に危害を加えるので、ぼくのやる気もパワーアップ」

「魔王さんの仕事が増えるんですね」

「本来は勇者さんの仕事ですよ」

「え~、私も夏休みほしいです」

「勇者は年中無休ですから」

「そもそも、夏だからってテンション上がる意味がわかりません。暑いじゃないですか」

「そりゃあ、夏ですから」

「暑いの嫌です」

「知っていますよ。きみはちょっと暑いとすぐ動かなくなりますから」

「全身に保冷剤を装着しないと動けません」

「道行く人から変な目で見られても知りませんよ」

「いいえ、彼らもわかるはずです。暑さの前では人間は無力なのだと」

「全身保冷剤は怪し過ぎるような気もしますが」

「むしろ逆です。目を輝かせてひとつくださいと言いに来るでしょう」

「まったくもう、人間ってば儚いですね」

「魔王さんはこれしきの暑さ、どうってことないんでしょうけど」

「いえ、めっちゃ暑いですよ」

「そうなんだ。魔王なのに」

「人間と同じ気温を感じ、人間と同じ感覚を味わい、人間と同じように苦しむ」

「苦しんでまで一緒にしなくても」

「あっっっっつ! 信じられないくらいあっっっっつ! 命の危機ですよこれ」

「現に熱中症で何人もあの世に行きますから」

「とてもじゃないですが、勇者さんを野に放つことはできません」

「私は野生児か何かか?」

「目を離したすきに溶けているかもしれませんから」

「骨すら拾えませんね」

「急いで水に浸けたら戻りますか?」

「その水すら、猛暑により熱湯と化しているのです」

「人間が住める環境ではありませんよ」

「しかし、人生は一度キリ。人間は猛暑の中でも夏を満喫するのでしょう」

「儚い命なのに……」

「それに、人間の想像力は豊かですからね。対抗する文明も発達していきます」

「勇者さんもよくお世話になっていますね」

「対夏用武器エア・コーン」

「どうしました、熱中症ですか?」

「使用方法はシンプルにぶん回す」

「冷風攻撃じゃないんですね」

「紛れもない鈍器です」

「振り回せる重さではありませんよ」

「そこはほら、魔王さんがやってくれるので」

「やっぱり戦うのはぼくなんですね。ですが、勇者さんも勇者のお仕事しないと」

「私はその辺で人命救助とかしますので」

「すばらしいですね。夏は人の動きも増えますから、活躍の場はたくさんですよ」

「あ、でも待ってください」

「どうしました?」

「その前に私を助けてほしい。暑くてもう無理……」

「しっかりしてください。夏はこれからが本番なんですよ?」

「なんておそろしいセリフだ」

お読みいただきありがとうございました。

おそろしい季節、夏。


魔王「夏がくると人間の儚さにびっくりします」

勇者「人間が儚いというより、夏が暑すぎるだけのような」

魔王「春も秋も冬もびっくり」

勇者「年中じゃないですか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ