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658.会話 暑中見舞いの話

本日もこんばんは。

みなさま、暑さにはじゅうぶんにお気をつけて。涼しい部屋でお読みくださいね。

「勇者さん、暑中お見舞い申し上げます~。どうも~。お元気ですか~」

「朝からやかましいですね」

「減らず口の元気あり。ハグを避ける元気あり。お菓子をつまむ元気あり」

「なにをメモしているのですか?」

「勇者さんの夏バテチェック表です」

「また変なものを」

「暑い時期に相手の体調を伺うことが暑中見舞いの役割ですから」

「毎日顔を合わせているじゃないですか」

「もっと見つめてくださいって言いました?」

「魔王さんこそ、暑くて幻聴が聴こえているようですね」

「聴こえる……。勇者さんからぼくを応援する声が……」

「このチェック表、ご自分で作ったのですか?」

「華麗なるスルーもすてきです。いえ、ヤブさんからもらったものですよ」

「本人は出てこないのに爪痕残しすぎです」

「夏バテでも食べやすいレシピも載っています」

「人間が食べられるものですか?」

「納豆キムチとおくらのネバネバおそうめんです」

「からだに良さそう」

「大根おろしと梅の冷やしおそうめんも」

「お腹すいてきました」

「お中元に贈るハムの二十パーセントオフクーポンもついています」

「ヤブさんってお医者さんですよね?」

「チェック表の裏には勇者さんへの暑中見舞いが書いてありますよ」

「あ、どうも。ご無沙汰しております」

「屋内にいても水分補給は忘れずに、とのことです」

「意外と熱中症になるらしいですからね」

「外に出る時は日傘がおすすめだとか」

「町では使っている人を見たことがあります」

「『日傘がなければ魔王サマを盾にするんだよ~』ですって」

「魔族として言っていいセリフなんですか、それ」

「『魔王サマに灼熱の太陽光をすべて吸わせるといいよ~』」

「魔王さん、実はヤブさんに恨まれていたりします?」

「険悪な空気になった覚えはありませんね」

「チェック表をもらう仲ですもんね」

「あのひとは医者として勇者さんのことしか考えていませんよ」

「変な魔族だなぁ。魔王さんみたい」

「一緒にしないでくださいよう。ぼくの方が気持ちは何億倍も上ですよ」

「競い合うことではないと思いますが」

「勇者さんを世界で一番想っているのはぼく! 他のひとは結構です!」

「ハムのクーポンも?」

「それはほしいです。冷やし中華に使いましょう」

「魔王さんのそういうところ、いいと思います」

「勇者さんもハム好きですか? たくさん入れましょうね」

「ええと、はい、そうしてください」

「さて、今日のお昼ご飯はなにに……おや?」

「なんですか、その紙」

「はがきというものです。暑中見舞いによく使われるものですよ」

「やけに真っ黒ですが、焦げているんですか」

「いえ、がんばってマーカーで塗りつぶしたようです」

「暇か?」

「魔界から届いたぼくへの暑中見舞いのようですが、不要」

「魔王さんは不老不死ですもんね」

「いえ、暑中見舞いを装った仕事の催促なので」

「仕事の催促をゴミ箱に入れてしまってよいのですか?」

「あはは、あれはただの紙きれですよ、勇者さん」

「あなたがいいならいいですけど」

「魔界の仕事なんてぼくがやるもんじゃないです」

「魔王がやらないなら誰がやるんですか」

「そのへんの雑魚……じゃなくて、名もなき魔族がやりますよ」

「たまに出る魔王っぽい魔王さんに驚いてしまう勇者です」

「ぼくはおそうめんを茹でる仕事の方が大事ですから」

「茹でるくらいなら私もやりますよ」

「火傷をしたらいけないのでだめです」

「過保護だなぁ」

「魔界も魔族もどうでもいいです。ぼくには勇者さんがいればはっぴーです」

「でも、中には魔王さんの体調を純粋に心配している魔族もいるようですよ」

「あ、読んではいけませんよ。罠があるかもしれないじゃないですか」

「ごめんなさい。でも、ほら。『魔王様、お元気ですか。会いたいです』って」

「………………べ、別に、魔族に心配されてもうれしくありませんし」

「お鍋、噴きこぼれていますよ」

お読みいただきありがとうございました。

めんつゆ、ごまドレッシング、水を合わせたつけだれにラー油を垂らしたものもおいしいですよ。


勇者「動揺しているじゃないですか」

魔王「ちょっとびっくりしただけです」

勇者「手元ぶるぶるですよ」

魔王「おそうめんが掴めない」

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