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657.会話 てるてる勇者さんの話

本日もこんばんは。

『てるてる坊主』というネーミング、とてもかわいいと思います。

「ぎゃーーーーーー! お、おばけが! って、勇者さんですか、びっくりしたぁ」

「驚かさないでください」

「それはこっちのセリフですよ。一体なんですか、どうしたんですか」

「頭からシーツを被って窓際に立っているだけです」

「当たり前のように言わないでください」

「当たり前のことですよ。雨を止ませるために」

「あ、もしかして、てるてる坊主ですか?」

「はい。これで雨もやむでしょう」

「怖がって見向きもされないような見た目ですが」

「一応、普通のてるてる坊主も作りましたよ」

「では、勇者さんがてるてるおばけになる必要はないような」

「全然やむ気配がなかったので、強硬手段に出ました」

「今日は一日大雨らしいですから、難しいでしょうね」

「でも、やんでもらわないと困るのです」

「聖女にお願いして晴れにしてもらいましょうか」

「そんな力があるのですか?」

「ないですよ」

「当然のように嘘を言わないでください。期待したじゃないですか」

「聖女には無理でも、魔王であるぼくなら……?」

「できるんですか?」

「できませんよ」

「なんなんだこいつ」

「自然には勝てません。風邪をひくといけないので、こちらに来てくださいな」

「勇者である私のてるてるぱぅわぁーなら雨をえいやっと……」

「できるんですか?」

「できません」

「なら仕方ないですね。はい、あたたかいココアですよ」

「ハッ、わかりましたよ、魔王さん」

「なんですか急に。ちゃんとふーふーして飲んでくださいね」

「地上から灼熱の炎を空へと舞い上がらせるのです。あ、おいしい」

「なんとなく言いたいことはわかりましたが、本気で言ってます?」

「雨を蒸発させる作戦です。どうでしょうか」

「地上が業火に包まれる予感がします」

「大怪獣バトルですね。任せてください、得意です」

「いつものB級映画のノリで生きると大変なことになりますよ」

「『ぼくの考えるさいきょうのまおう』みたいなひとに言われても」

「大雨を蒸発させる炎なんて出せません」

「がんばっても無理ですか?」

「がんばっても無理です」

「私がお願いしても?」

「うっ……、そりゃ勇者さんのお願いならぼくはなんだってやってあげたいですけど」

「きゅるるるんってやっても?」

「な、なんですかそれ⁉ どこで知ったんですか⁉ ええっ、どういうこと⁉」

「本に書いてあったんです。効果はよくわかりませんでしたけど」

「びっくりした……。びっくりしましたよ、ぼくは」

「息が切れるほど驚かなくても」

「あまりの驚きに雨もやむ勢いです」

「言いすぎですよ」

「勇者さん、それ他のひとにやっちゃだめですからね」

「なぜですか?」

「なんでもです。絶対にだめです。ほんとに! わかりました?」

「おもしろそうな気配を察知」

「だめですってば! 書いてあった本はどこです? 厳重に保管しないと!」

「おおげさだなぁ」

「シーツを被って顔が見えない状態ですらこの威力なんです。わかりますか?」

「なにがですか?」

「勇者さんのお顔が見えていたら、ぼくはどうなっていたか」

「どうなっていたんですか?」

「死んでいたと思います」

「不老不死ですよね」

「いえ、間違いなく死んでいました」

「迫真の魔王さん」

「想像しただけで呼吸が乱れ血管が切れ心臓が止まり指先が震え視界が霞みます」

「そんなことある?」

「魔王ぱぅわぁーが暴走しないよう、咄嗟に舌を噛みましたよ」

「落ち着いてください」

「ぼくだったから耐えられた……。ぼくじゃなかったら耐えられませんでした」

「いや、あんまり耐えられていませんよね?」

「ぜえ……はあ……。心を落ち着かせるためにシャワー浴びてきますね」

「いってらっしゃ……、大雨の中に消えていった」

お読みいただきありがとうございました。

このSSでの勇者さんはずっとシーツを被っています。文字だけだとよくわかりませんね。


魔王「ところで、なぜ雨をやませようと?」

勇者「散歩に行きたい気分でして」

魔王「傘をさして行けばよいのでは?」

勇者「それはめんどくさい」

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