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655.会話 洗濯物の話

本日もこんばんは。

洗濯物が一瞬で乾く夏。喜びよりも恐怖を感じます。

「太陽ばっちり! 今日は洗濯物がよく乾きますねぇ」

「主婦みたいなことを言う魔王ってどうなんですか」

「だめでした?」

「もっと悪そうな発言をしてくださいよ」

「雑に干された洗濯物を片っ端からしわ伸ばししてやる……って?」

「それはいいことなんですよ」

「勇者さんの使っている柔軟剤教えてくださいなっ」

「あなたと同じですけど」

「きれいに乾いた服の香りを嗅ぎたいです」

「好きにすればいいじゃないですか」

「服単体ではなくてですね」

「それ以上はアウトですよ」

「だめかぁ」

「セリフすら危険な香りがします」

「今日はお花の香りの柔軟剤を使ったのですが、お気に召しませんでした?」

「特にこだわりはありません」

「洗濯物を干すたびに、これが日常……と幸せを噛みしめるのですが」

「お母さんか」

「勇者さん、靴下を丸めたまま洗濯かごに入れちゃだめですよ」

「なぜですか?」

「丸まったままではしっかり洗えないからです。ぼくが毎回伸ばしているんですからね」

「めんどくさいなって思ってます?」

「まったくもう、困った子ですねぇ……えへ、そんなところもぼくは好き……えへ……」

「なんだ、あんまり困ってないのですか」

「なにゆえ残念そうなのですか?」

「あれは魔王さんへの地味な嫌がらせとして、わざわざ丸めているのです」

「勇者さんにとってもめんどうな作業じゃないですか」

「うまく丸くなるように奮闘しています」

「どこに力を入れているのですか」

「ズボンやTシャツの片方が中に入るようにしたり」

「それもわざとだったんですか?」

「紐を方結びにしたり」

「あれ解くの大変なんですよ」

「魔王さんを困らせるのが勇者の使命ですから」

「発想がこどもすぎて好きです」

「なんですか?」

「すみません、思わず。……と言いつつ、実はいたずらだと知っていましたけど」

「さっきから何をぶつぶつと」

「いやぁ、勇者さんってば思春期のこどもか~? って感じですね」

「年齢的にはそのはずですけど」

「でもいい子ちゃんなんですよねぇ~。んも~、超ぷりち~」

「今日もうるさいですね」

「真夏の日差しのように高い攻撃力ですこと」

「それにしても、よく毎日毎日洗濯しますね」

「勇者さんのお召し物を清潔に保つ喜び」

「あ、ただの特殊なひとでした」

「柔軟剤を変えて勇者さんの反応を見る楽しみもありますよ」

「よほど強い香りでなければなんでもいいです」

「明日はこれを使ってみようかと」

「なになに、『夕焼けかと思ったら朝焼けだった時の心の香り』」

「お買い得品でした。他にもいろいろありますよ」

「『石につまづいて転んだ先でカエルと目が合った時に吹いた風の香り』」

「こっちは大人気商品なんですって」

「『日曜日かと思って二度寝したら月曜日だった時の朝の香り』」

「売れ筋ナンバーワンはこちらです」

「『水泳授業後の教室で窓から差し込む夏の香り』。どれもよくわかりませんよ」

「使ってからのお楽しみってことです」

「そもそも、柔軟剤は絶対に使うものなのですか」

「絶対ではありませんが、洗濯物からいい香りがしたらうれしいじゃないですか」

「まあ、花の香りはいいと思いますけど」

「気になってるあの子から香る優しい匂い……。ドキッとした時、うしろからぼくを呼ぶ声がして――という青春物語を始めましょうね、勇者さん」

「嫌すぎる」

「古いことわざにもあるでしょう。『洗濯物にはロマンと青春が詰まっている』と」

「知らないけど絶対ないと思います」

「普段同じ服ばかりを着ている人が、洗濯中だけ着る服もレアでしてね」

「魔王さんが楽しそうなことしかわからない」

「ほら、よくあるじゃないですか。洗濯中だけいつもより防御が薄くなる服装とか」

「ああ、裸ってことですか」

「せめて一枚は着ましょうね」

お読みいただきありがとうございました。

ワイルド勇者さん。


勇者「でもほら、寒い時に濡れた服を着たままではいけないと言いますし」

魔王「時と場合によって対応が違うのですよ」

勇者「最初から着ていなければ解決」

魔王「原始時代でも服は着ていましたよ」

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