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641.会話 ツリーハウスの話

本日もこんばんは。

高所恐怖症の人は住めないツリーハウス。

「ぼく、勇者さんをツリーハウスに住まわせる夢がありまして」

「『一緒に住むことが夢』と言わないなんて、珍しいですね」

「おやぁ? 言って欲しいのですか? では、言いましょう! 一緒に住――」

「別に結構ですけど」

「最後まで言わせてくれない勇者さんもきゅーとですねっ」

「ツリーハウスがなんですか?」

「えっとですね、ツリーハウスに住む勇者さんを想像してみてください」

「しましたよ」

「超きゅーとじゃないですか?」

「いや別に」

「超きゅーとなんです」

「ついに疑問形ですらなくなったな」

「そして、どこかプリンセスみを感じませんか?」

「いや別に」

「どこかプリンセスみを感じるんです」

「ああ、はい、そうですか」

「窓際に止まった鳥と会話していたり、お花を摘んでいたりしていそうですね」

「そうですね」

「そして、ある日のこと。道に迷った隣国の王子様がツリーハウスを通りかかり……」

「絵本で見たような展開」

「超きゅーとな勇者さんを見つけ、プロポーズするんですよう! いぇあ!」

「唐突すぎてちょっと」

「そこに乱入する魔王。二人の間でこう言うのです。『ぼくの方が先にいたのに!』」

「負けヒロイン?」

「泣きながら愛を主張する魔王。果たして結果は――⁉」

「どうなったんですか?」

「普通にフラれたので魔王の力でこてんぱんにしちゃいました」

「かわいそうな王子様」

「だってぼく魔王だもん」

「だもん、じゃないですよ。大人でしょう」

「大人だからこそ、譲れないこともあるのです」

「巻き込まれたツリーハウスも哀れですね」

「プリンセスみを醸し出すからです」

「理不尽な不満を言わないでください。自然のパワーで締め上げますよ」

「あらやだたくましい」

「魔王さんの骨を……」

「バキバキに折るんですか? おそろしいことをしますね」

「ラーメンの出汁に使います」

「想像の斜め上をいく展開やめてください」

「そろそろ慣れてくださいよ」

「こればかりは難しいです。きみの超展開を甘くみないでください」

「ちなみに、超展開のルビは『くだらない』です」

「なんでちょっとどや顔なんですか?」

「何事も極めるといいことがあるのですよ」

「『くだらない』を極めるとどうなるのですか?」

「魔王さんの思考を破壊することができます」

「どう足掻いてもプリンセスとは程遠い語彙ばかり出てきますね」

「なに言ってるんですか。プリンセスには悪役がつきものでしょう」

「気持ちはわかりますが、勇者さんの役ではないのですよ」

「森の奥のツリーハウスで毒薬を作るのです」

「大きな壺をぐつぐつ煮ているのですか。絵本で見たことありますね」

「いえ、試験管やビーカー、リトマス試験紙を準備して」

「ずいぶん理系な悪役ですね」

「地中の成分を分析します」

「ただの研究者じゃないですか」

「家に帰る手間を省くため、ツリーハウスを建てたのです」

「合理的ですけど」

「そして、ある日のこと。道に迷った隣国の研究者が通りかかり……」

「言葉がひとつ違うだけで、まったくロマンチックではありません」

「一緒に土壌の研究をしているうちに、仲が深まっていくのです」

「後半だけならまだしも、プリンセスは土壌の研究はしないのですよ」

「偏見はよくありません。研究者気質のプリンセスだっているかもしれませんよ」

「ぼくが知る限りではいませんが……」

「女神の血を引く姫巫女なんかは有名ですね」

「勇者さんのことですか?」

「ひとつも当てはまらないのに、よくそんな質問ができましたね」

「可能性は最後まで諦めたくないのです」

「お好きにすればいいですけど。ちなみに、先ほどからずっと何をしているのですか」

「やっと訊いてくれましたか。ツリーハウスに相応しいか否か、木登りで確認をですね」

「誰も通りかからないことを祈るばかりです」

お読みいただきありがとうございました。

木の幹にしがみつく魔王さん。変人。


勇者「誰かが来たら赤の他人のフリをします」

魔王「その言い方だと、普段は他人ではないのですね⁉」

勇者「普段は青の他人です」

魔王「まさかの別色バージョン」

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