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640.会話 魔王さんが変な物を持ってきた話

本日もこんばんは。

サブタイの通りの話です。

「どうしたんですか、その帽子」

「似合っていますか? ありがとうございます」

「まだ何も言っていませんし、似合っていな――ええと、はい、まあ、うん」

「言葉を選ぼうとして諦めた気配を察知しました」

「魔王さんが傷つくかと思いまして」

「なんてお優しい勇者さんなのでしょう。ぼくはいいので、言ってください」

「全然似合ってない。驚異のダサさ。発案者の頭が心配。チョイスする魔王さんも変」

「よくもまあ、そんなにすらすらと出てくるものですね。頭の回転がはやいのですね!」

「やかましいです」

「聞き慣れた一言でもグサっときますね。まあ、そんなきみもすてきですが」

「うるさいです」

「意味は同じなのに、攻撃力が上がる不思議」

「そのヘンテコ帽子、どこで買ったんですか」

「怪しげな人が怪しげな場所で広げていた怪しげなお店です」

「そこまで怪しいなら無視してください」

「ぼくも通り過ぎようと思ったのですが、商品の説明を聞いてビビッときたのです」

「毒でも盛られました?」

「んもう、勇者さんじゃないんですから」

「そうですね」

「否定してほしいのですが、事実なので何も言えない魔王です」

「怪しげな人が怪しげな場所で広げていた怪しげなお店で買った怪しげな品物ですか」

「聞いて驚いてください。これを被ると相手が何を考えているのかわかるのだ!」

「へえー」

「無表情すぎる」

「相手の思考が読める帽子ですか。要ります?」

「日頃、勇者さんが言葉にしない僕への愛を覗き見ることができるんですよ?」

「日頃、魔王さんへ言葉にしない愛が存在していると思っている時点で病院に行け」

「照れなくていいのです。ぼくが勇者さんの脳内を隅々まで見ますから」

「神々しく言っていますけど、内容は完全にアウトですよ」

「全部見たいです、全部」

「身ぐるみ剝がされるんですか、私」

「何の話ですか? 風邪をひくので服は着ないとだめですよ」

「うーん、そういうところ」

「ちなみに、ちゃんと名前もあるのだそうです」

「『これだけヒントがあるのに騙されて弄ばれるとは愚かな帽子』ですか」

「それは勇者さんの本心ですよね。いいですか、聞いて驚いてください」

「へえー」

「まだはやいです。いいですか、この帽子の名前は……」

「びっくり」

「まだはやいですって。この帽子の名前は『アンビリバ帽』です!」

「くだらな……」

「いつもの勇者さんといい勝負じゃないですか?」

「私は誠心誠意、真面目にふざけているというのに」

「胸を張って言うことではないかと」

「くだらない会話に命を燃やしているんですよ?」

「怠惰柱勇者さん」

「怪しさ満点の帽子相手に負ける気はしません」

「勝敗はどのように決するのですか」

「その帽子を被り、私の思考を読んでください」

「えっ、よろしいのですか? てっきり、『なにすんじゃ首落とすぞ』と言われるかと」

「急なキャラ変やめてください」

「では、許可を得たので遠慮なく。えいっとな」

「いま、私が何を考えているのか当ててください」

「ばっちり読めました。『魔王さん、今日もまじでびっぐらぶ』です」

「おお、すごいですね。全然違います」

「おや、おかしいですね。『魔王さんって美少女すぎない? まじ好き』でしたか」

「真面目に読んでください」

「失礼しました。『今日の夕飯はエビフライとミネストローネがいいなぁ』ですね」

「大正解」

「えっ、合ってるんですか?」

「へえ、その帽子、本物なんですね。絶対噓っぱちだと思っていましたよ」

「え、あの、ぼく、全部テキトーに言って……」

「怪しい人も、見た目が怪しいだけで中身はまともなんですね。思い込みはやめます」

「あの、正解して一番びっくりしているのはぼく……」

「とても驚きました。まさしくアンビリバボーですね」

「えと、その、これ、ほんとにただの変な帽子のはず……」

「買ってくれてありがとうございます。おかげで夕飯がエビフライになりました」

「いえいえ、こちらこそ。……って、勇者さんまさか」

「夕飯のメニューを考える手間が省けましたね」

「そうですね。きみに弄ばれたおかげです」

お読みいただきありがとうございました。

くだらなさは一級品。


勇者「食事のメニューを考えることは大変だと聞きましたよ」

魔王「ぼくは好きですけどね。明日は何が食べたいですか?」

勇者「なんでもいいです」

魔王「勇者さんだから許すセリフですよ、それ」

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