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64.会話 マニキュアの話

本日もこんばんは。

勇者さんより魔王さんの方が圧倒的に女子力は高いです。

「勇者さん、マニキュア塗りませんか?」

「なんですか? プリキュ――」

「違いますよ。彼女たちは悪者と戦う正義の戦士としては手練れの方々ですが、今回はマニキュアの話です。爪のお化粧のことでして、塗装をするんですよ。透明なものから赤青緑などなど。ワンポイントおしゃれです。どうですか?」

「どうですかと言われても。結構ですとしか」

「結構しないでくださいよう。いろんな色をご用意しましたから、見るだけでも、ね?」

「圧がすごい。まあ、見るだけなら。……へえ、いつかの絵の具みたいに青でもいろいろあるんですね。たしかにきれいです」

「そうでしょうそうでしょう。さ、手を出しでください。ぼくが塗って差し上げます」

「いえ、結構です――って、力が強いな、いつものごとく。びくともしない」

「この水色とかどうです? 淡い空のような色でとってもきれいですよ~」

「私に青は似合いませんから。塗るなら他のにしてください」

「あっ、取らないでくださいよう。仕方ないですねぇ、黄色……橙……桃色もいいなぁ」

「透明なやつでいいですよ」

「せっかく塗るんですから、勇者さんをもっとかわいくする色がいいです」

「なんでもいいですよ。魔王さんのお好きなようにしてください」

「投げやり……。ぼくの好きなように、ですか。では、これ一択ですね」

「赤……」

「ぼくの好きな色ですよ。赤はきみの色ですから」

「……なんでもいいです、けど」

「動かさないでくださいねぇ。誠心誠意、心を込めて塗りますよ」

「動きたくても動けない……。マニキュアってちょっと冷たいですね」

「乾かして、手をぎゅっとすればあたたかいですよ」

「絵の具でもできそうですね、これ」

「絵具は水に濡れたらすぐ落ちちゃいますからね。はい、勇者さん。もう片方の手を貸してください」

「どうぞ。……へえ、見事なものですね。私の手じゃないみたいです」

「爪なんて小さなものだと思っているでしょう? ですが、手を差し伸べた時も繋いだ時も、頬に触れる時も手を振る時も、爪は目に映りますから。色は心に深く、濃く残る記憶となりますよ、きっと」

「不吉で忌み嫌われる色ですからね。いろんな意味で記憶に残りますよ」

「ぼくは『きれいだなぁ』と思って記憶に残りますよ。ほら、できました。きれいです」

「……赤い……のに、きれいに見える。ふしぎです」

「赤はうつくしい色ですよ。情熱的な色でもあります」

「……悪くないです。次は魔王さんの番ですね」

「ぼく? いいですよう、ぼくは」

「私で遊んでおいてスルーはさせませんよ。貸してください。私が塗って差し上げます」

「勇者さんが塗ってくれるんですか? ではでは、ぜひお願いしますっ。色は――」

「色は私が決めます。塗り終わるまで目をつぶっていてください」

「え? あ、わかりました。へ、変な色にしないでくださいね?」

「失礼ですね。魔王さんよりは美的センスはありますよ」

「きみはたまにふざけるので……」

「はい、閉じた閉じた。いきますよー」

「……なんだかちょっと、緊張しますね。わくわくとどきどきと若干の不安が……」

「心配しなさんな。完璧に仕上げますから」

「その自信はいったいどこから……。……こんな形で勇者さんに手を握られるとは思わず嬉しさが……」

「何か言いました?」

「いえ、何も。進捗はどうですか?」

「順調です。次、片手ください」

「どうぞ。いやぁ、勇者さんがマニキュアを塗らせてくれるとは思いませんでした。ぼくにも塗ってくれるなんて、感激です」

「前者は無理やりでしたけど。……はい、できました。目を開けていいですよ」

「いざ! ……おおっ! きれいな青色ですね! それに、とっても上手ですよ」

「ちょっと楽しかったです。満足満足」

「うれしいです~。どうですか? どうですか? きれいですか、ぼく?」

「ええ、きれいです」

「エッ⁉ ゆ、勇者さんが素直に感想を……⁉」

「青色が」

「あ、そうですよね、はい。知ってました」

「爪に色がつくだけでこんなに変わるものなんですね。新たな発見です」

「気分によって色を変えるもよし、好きな色を身に付けるもよしですよ」

「私の好きな色は魔王さんについていますけどね」

「ぼくの好きな色は勇者さんについていますっ」

「今は気分がいいので特に何も言わないで差し上げます」

「そんな勇者さんにもうひとつ。足の爪に施す場合はペディキュアと言いまして――」

「足は結構です。どうせ靴で見えませんし」

「そう言わずに。せっかくおしゃれしたんですから。はい、座って靴脱いで~」

「ちょっ、やめてくだ――いやだからなんでこんなに力強いんですかっ!」

お読みいただきありがとうございました。

除光液を隠していた魔王さんですがあっさり見つかり没収されました。


勇者「これ、飲んだらどうなります?」

魔王「吐かせずにお医者様に直行します」

勇者「人間には会いたくないです」

魔王「命にかかわるのでこの時ばかりはガマンしてください……」

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