632.会話 星屑の話
本日もこんばんは。
サブタイはロマンチックですが、内容はいつもの。
「魔王さん、ちょっとやってみたいことがあるのですが」
「勇者さんの頼みとあらば、この魔王、なんでも叶えましょう!」
「星屑を拾いたいのです」
「イッツファンタジー」
「星屑の海という場所があるのだそうです」
「一応、確認ですが、どこで知ったのですか?」
「こちらです。ででーん」
「本ですね。小説です。フィクションです。想像です。イッツファンタジー」
「現実に存在しないと?」
「ノンフィクションならまだしも、これはファンタジー小説のようですからね」
「なーんだ……」
「ぜ、絶対にないとは言い切れませんけど!」
「でも、魔王さんも知らないのでしょう?」
「世界は広いな大きいな~ですから、まだ知らぬ場所はいくらでもあります」
「そのメロディは海だった気が」
「星屑の海でしたっけ。海も広いですからね、可能性は否定できません」
「行ってみたいです」
「すばらしいです。旅の中で探してみましょうね」
「たくさん拾えたら、魔王さんにも差し上げますね」
「うれしいです。……というか、なんてすてきな会話なのでしょう。とても穏やかです」
「こん棒に接着して攻撃力を高めたいです」
「すみません、発言を撤回します」
「砕いてもよし、煮てもよし、ぶん投げてもよし」
「名称のうつくしさに騙されたのかもしれません」
「そのままですよ。空から降ってきた星屑が光となって溜まる海だそうです」
「きれいですね」
「暗い夜でも星の光によって明るいのだとか」
「ロマンチックです」
「お腹がすいたら食べてもいい」
「食用なのですか」
「塩水はしっかり洗い流しましょう」
「星屑自体の味はどんな感じなのでしょうね」
「えーっと、書いている情報によると『ほんのり温かくふわりと広がる甘み』ですって」
「甘いのですか。それは俄然興味が湧きますね」
「食べ過ぎるとお腹が光るって」
「愉快な姿になってしまうのですね」
「加工すると装飾品にもなるそうで、人気が高いと書いてあります」
「星屑のアクセサリーですか。実際にあったら端から端まで買うと思いますよ」
「一キロ金貨一枚で取引されるそうです」
「なんてこったい」
「勇者辞めて星屑拾おうかな」
「きらきらの星屑を拾って、きらきらの金貨を得るのですね」
「世のため人のためになりますし」
「勇者もなりますよ」
「きれいな方がいいじゃないですか」
「勇者が汚いみたいな言い方ですね」
「ふっ……、所詮は神様の操り人形なんですよ」
「えっと、ノーコメントで」
「火を点けると爆発する性質もあるそうなんです」
「爆薬にもなるのですね」
「星になれ」
「意味がちょっと」
「きらりと輝く星になれ」
「言葉を付け足してほしいという意味ではないのですよ」
「ぎらりと輝く星になれ?」
「言葉のチョイスの問題ではなくてですね」
「そして輝くウルトラスター」
「へいっ! あっ、つい」
「こうして、星屑たちは己が輝く場所を探して空に舞い戻っていきましたとさ」
「帰っちゃったんですか」
「アクセサリーよりコンサートの照明希望だったみたいで」
「成りたい形があるのですね。また軽率に自我を生んでいますけど」
「私はいらないので差し上げたんです」
「自我をですか? 返してもらってください」
「もう空の上です」
「星屑なら降ってきてくださいよ」
「空を飛べないので無理ですね」
「ではぼくが代わりに――」
「そして輝くウルトラスター」
「へいっ! あっ、またやっちゃった!」
お読みいただきありがとうございました。
すみません、衝動を抑えられませんでした。
魔王「どうして飛び上がってしまうのでしょうか」
勇者「DNAに刻まれたものがあるのです」
魔王「ぼく、魔族ですが」
勇者「関係ありませんよ」