630.会話 枷飾りの話
本日もこんばんは。
定期的に出てくる枷飾りさん。
「…………えへ」
「んかわいい~~~~~‼ 痛っっ‼」
「……えーっと、だいじょうぶですか?」
「覗き見の罰が下ったようです」
「そのようですね。……いつから見ていました?」
「勇者さんが靴を脱いで裸足になり、足をぶらぶらしながら枷飾りを見て微笑んでいた時からです。あまりの尊さに一度目を逸らしましたが、それ以降は凝視していました」
「最初からじゃないですか。凝視するな」
「すみません。己の視覚を信じられなくてつい」
「盛大に頭をぶつけてケガはありませんか?」
「心配いりません。魔王ですから」
「血が出ていますよ」
「これはあれです。すばらしき尊さに脳が泣いているのです」
「誤魔化すにも限度はありますよ」
「だってぇ……、いろんな感情が溢れ出してすばばばぼぼえべばば」
「効果音がこわい」
「枷飾りを気に入っていただけて超はっぴー!」
「退室してください」
「無慈悲」
「私はくつろいでいたのです」
「勇者さんがくつろいでいる姿を見てぼくもくつろぎます」
「落ち着かないのでやめてください」
「そんな。静かにしていますから」
「顔がうるさいんです」
「こんなに美少女なのに?」
「滲み出るオーラもやかましいです」
「愛情とびっぐらぶと慈愛とハートによるオーラなのに?」
「全部同じような」
「だって、勇者さんが枷飾りを拝めるのは部屋の中くらいですし……」
「だからくつろいでいるのですよ」
「やっぱり、いつも見えるようにしませんか?」
「オールウェイズ裸足?」
「ケガをするのでだめです」
「丈が短い靴ということですか」
「サンダルタイプの靴はいかがでしょう?」
「なるほど。それなら枷飾りは見えますが、ケガはしやすそうですね」
「ま、魔法で防御とか……」
「私の魔法は茨なので、余計にケガしますよ」
「ぼくの願いは叶わないのでしょうか……」
「欲望に忠実な願いですね」
「足にも手にもつけられるように改造したい」
「腕ならつけられそうですけど」
「全身に装着しませんか?」
「鎧?」
「より安全で、よりすてきにしたいのです」
「サンダルを提案したひとの言葉とは思えませんね」
「枷飾りの勇者になりましょう、勇者さん!」
「馬子にも衣裳って言われそう」
「装飾も追加して、動くたびに軽やかな音がするのはどうでしょう」
「あんまり派手なのはちょっと」
「金属を振り回すことで雑魚魔物を倒すこともできます」
「そんなに攻撃力ありますかね」
「アクセサリーって地味に痛いんですよ」
「そうなんですか」
「想像ですけど」
「経験者みたいな顔しておいて」
「想像は大事ですよ。考えてください、枷飾りで敵を倒す勇者さんを」
「ふむ。……どうやって?」
「このチェーンみたいなところが敵の心臓を貫くのです」
「固定されていますけど」
「魔法の力で長く伸びるのですよ」
「へえ。攻撃だけじゃなく、拘束にも使えそうですね」
「落下しそうになった時はどこかに巻きつけてピンチを打破することも」
「蜘蛛の糸を出すヒーローみたいになれそうです」
「円形なので魔法陣を刻むのも簡単!」
「それ、私ができないやつですよね」
「そうでした」
「そもそも、枷飾りを武器にする必要はないのではないでしょうか」
「というと?」
「そのまま蹴った方がはやい」
お読みいただきありがとうございました。
相変わらず読者様の想像力頼り。
勇者「……まあ、裸足じゃない時も見たいと思うことはありますよ」
魔王「いつでも言ってくださいね」
勇者「私に甘いですね」
魔王「何を今更」