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63.会話 砂糖と塩を間違えた話

本日もこんばんは。

実際間違えたことのある人ってどのくらいいるのでしょうか。「我こそは間違えた人である」という方は自信をもってお読みください。それ以外の方は砂糖と塩を横に準備してお読みください。

「どうしたんです? 変な顔してうなだれて。邪魔ですよ、そこ」

「料理を失敗して落ち込んでいるんですよう……。あ、すみません今どきます」

「魔王さんが料理を失敗するなんて珍しいですね。なにをどう失敗したんですか」

「お砂糖とお塩を間違えてしまいましたぁ……。勇者さんとおやつに食べようとスコーンを焼いたんですけど、これでは食べられません……。ぐすん」

「スコーン……? あ、おいしそう。生活力の高い魔王さんですね」

「甘くしようと多めに入れたせいで、さらに食べられるものではなくなりました」

「ふうん。ひとつもらってもいいですか」

「それはもちろんいいですけど、しょっぱいですよ?」

「構いません。いただきますね」

「あっ、お、お水持ってきますよ。しょっぱいですからそれ……!」

「いえ、だいじょうぶです。おいしいですよ」

「えっ、いやまさかそんな」

「魔王さんが食べないなら私がぜんぶ食べます」

「む、無理していません……? ほんとに食べるんですか?」

「食べます。それに、おいしいですよ」

「ゆ、勇者さん~……!」

「基本、舌バカですからね、私」

「……勇者さん?」

「毒でも入ってない限りなんでも食べますよ。いや、毒入っていても食べるかも」

「…………勇者さん……」

「これはこれで他の料理と合いそうな味です。これ、なんだかお腹にたまりますし」

「……うーん」

「なんですか、その顔。おいしく食べてますよ?」

「食べないぼくには文句を言う資格はないですが、あんまりうれしくないです……」

「スコーンに謝ってください」

「ごめんなさい……」

「そもそもスコーンの味を知りませんし。こういうものだと言われたらふつうに食べますよ。事実、おいしいですから」

「えっ。まさか勇者さん、初スコーンですか?」

「そうです。おいしいですね」

「だっ、だめです食べちゃだめです! 初スコーンがスーパーしょっぱい大失敗作だなんてぼくが許しません。許せません。吐き出してください!」

「あっ……ぶないですね。食べている時に突進しないでください。食べている本人がおいしいと思ってるんだからいいじゃないですか」

「だめです! 最初はとびきりおいしいスコーンじゃないと認めません」

「なにを認めないんですか」

「初スコーンの思い出ですよ」

「ええ……。どうでもいい」

「お砂糖とお塩を間違えた日に限って勇者さんが初めて食べるものを作ってしまうだなんて……。ぼくのおばかー‼ 今まで間違えたことなんてなかったのにぃぃ」

「まあ、砂糖と塩ってそっくりですし。仕方ないですよ」

「でもでも、似ているから間違えないようにってラベル張ってあるんですよ。使う時はしっかりラベルを確認してから入れているのに~……」

「うっかりは誰にでもあるでしょう。そのうっかりが今日だっただけですよ」

「ちゃんと見たのにぃ~……。ぐすん……」

「ラベルだけじゃなくて舐めて確認すればいいじゃないですか。味覚は確実でしょうし」

「あっ、そうですね。次はしっかりばっちりきっちり確認してから作ります。最高においしいスコーンを勇者さんのお口に!」

「また作ってくださるんですね。ありがとうございます。では、私の仕事はお腹をすかせることと掃除ですね」

「掃除? いつもお掃除なんてしてないじゃないですか。どうしたんです、突然」

「その言い方だと私がただ食っちゃ寝しているように聞こえます」

「おおむね正しいかと」

「失礼ですね。私だって掃除くらいしますよ。こうしてほうきをちりとりを持っているでしょう?」

「あ、やっぱりほうきとちりとりなんですね。ぼくの見間違いかと思ってました」

「かなり失礼ですね。あ、ちょっとそこどいてください。掃きますから」

「え? あ、はい。……ん? なんだかザラザラしています。砂でしょうか」

「はーいちょっと失礼しますね。さっさっさと」

「砂じゃないですね。白いですし。あれ? 甘い匂いがします」

「はーい回収回収」

「うーん……? あれ、こっちはお塩だ。お砂糖と混ざって……。まさか」

「…………」

「勇者さん、勇者さん。怒らないから教えてください」

「それ絶対怒るやつ……」

「お砂糖とお塩、ぶちまけたんですね? それで、中身を入れ直した。違いますか?」

「…………ええと」

「そして、入れ直す時にお砂糖とお塩を間違えた。そうでしょう?」

「……お、おそろいの間違いですね、魔王さん」

「そう言えばぼくが絆されると思っていませんか? そうですねって言おうとしちゃったじゃないですか」

「え、ちょろ――」

「勇者さん?」

「すみませんでした」

お読みいただきありがとうございました。

このあとおいしいスコーンが大量に焼かれたとか焼かれなかったとか。


勇者「おいしいです。甘いのもしょっぱいのも」

魔王「さっきのは忘れてください」

勇者「あと三日くらいは言いますね」

魔王「微妙な期間……」

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