629.会話 同窓会の話
本日もこんばんは。
同窓会には行けません。私は今、くだらないSSを書いています。
「ぼく、いつか勇者さんと一緒に同窓会に出るのが夢なんです」
「一体いくつ夢があるのですか」
「叶えても増えていくのでわかりません」
「厄介だな」
「同窓会とは、学校の卒業生の集会。つまり、そういうことです」
「わかりません。ちゃんと説明してください」
「学校に通い、卒業しないと同窓会に出られないのですよ」
「そうですか」
「つまり、そういうことです」
「わかりましたが、わかったと言いたくないです」
「学校に通いましょう!」
「お断りします」
「なぜですか?」
「人間だか魔族だか知りませんが、不特定多数の他人がいる空間は嫌です」
「そう言うと思いまして、こちらをご覧ください」
「『おいでませ寺子屋』? なんですかこれ」
「勇者さんの専用の学校を作ろうと」
「勇者さん専用の学校を作る? 冗談は程々にしてください」
「専属教師にはかぐやさんを抜擢しました」
「忙しそうですけど」
「『息抜きができますわぁ~!』と喜んでいましたよ」
「やっぱり忙しいんですね」
「今、締め切りを四つほど抱えているそうです」
「連絡しない方が彼女のためになりますよ」
「勇者さんの教育のためならと、快く引き受けてくれましたよ」
「休みたいだけだと思いますが」
「教育といっても内容は様々です。何か学びたいことはありますか?」
「魔王さんを簡単に起こす方法ですかね」
「それは難しいですね」
「動かずに魔物を倒す方法」
「かぐやさんは戦闘タイプではないので」
「おもしろそうな本の見つけ方」
「自著を薦めてきそうですね」
「そもそも、私には学校がどういうものかという知識もありませんよ」
「朝十時から午後三時まで。時間割は最大四つ。在籍期間は一か月です」
「緩い。少ない。短い」
「卒業してからが本番ですからね」
「学生は学ぶのが仕事でしょう」
「一か月のうち、二週間は同窓会の催し物について考えます」
「学んですらいない」
「やっぱり食べ放題でしょうか。コース料理もいいですね」
「おいしいものは食べたいですけど」
「かぐやさんは海鮮料理が食べたいと言っていました」
「先生も来るんですね」
「最初に誘った時は食事会を掲げていましたから」
「騙されているじゃないですか」
「楽しくしゃべっている間に寺子屋の話をちょびっとだけ」
「詐欺の手口」
「締め切りに追われ、思考能力が低下していたので余裕でした」
「余裕とか言わないであげてください」
「いざとなったら、なんちゃって同窓会という体でご飯を食べましょう」
「初めからそれでよかったような」
「ぼくは形を大事にしたい派なのです」
「説得力はありますけど」
「おいでませ寺子屋の制服も発注したのですよ」
「行動力はあるんだけどなぁ」
「デザインをお任せしたのですが、どうせやらないだろうと却下されました」
「デザイナーさんは冷静なひとなのですね」
「ただ、制服デザインは楽しそうと試作品が届きました」
「作っちゃったんだ」
「こちらがおいでませ寺子屋制服でございます」
「ええと、ファッションはよくわかりませんが、かわいらしいと思います」
「一着だけなので、勇者さん用です」
「通いませんよ」
「では、勇者さんの日々の服チョイスに加えてください」
「いつも同じ服です」
「そして、ご飯を食べる時に着て、なんちゃって同窓会をしましょう」
「私だけ着て同窓会になるんですか」
「ぼくは引率のカメラマン役ですから」
「ただ撮りたいだけですよね」
お読みいただきありがとうございました。
同窓会に行きたくない人は『私は今、くだらないSSを読んでいます』を理由にしましょう。
勇者「魔王さんはやりたいことがたくさんあるのですね」
魔王「いまこの瞬間も増えていきますよ」
勇者「何が増えたんですか?」
魔王「学校用の土地を買いたい」