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617.会話 埋まっているタイヤの話

本日もこんばんは。

校庭や公園にあったあの遊具についてのお話。

「世界には不思議なことがたくさんあります。そして、そのどれもが理解不能です」

「ブランコに座りながら言われましても」

「あちらをご覧ください」

「タイヤの遊具ですね」

「なぜ半分埋まっているのでしょう」

「それはぼくも不思議でしたが、埋めることで固定しているのではないかと」

「そもそも、なぜタイヤなのでしょう」

「噂によると、廃棄が大変なので有効活用しているらしいですよ」

「なんだ、ちゃんと理由があるのですね」

「理由もなしにタイヤを埋めることはないと思いますよ」

「てっきり、並々ならぬ感情をタイヤに抱く人が世界を渡り歩きながら埋めているかと」

「かなり特殊な人ですね」

「埋める深さも様々です。JIS規格で統一されていないのですか?」

「ぼくは聞いたことないです」

「私が直談判しましょう。せめて座るのにちょうどいい高さにしてくれ、と」

「椅子目的ですか」

「いざという時に便利なんですよ」

「もしかして、ブランコも椅子として使っているのですか?」

「漕いでいない時点でお察しです」

「遊具とは一体」

「気持ちはいつでも遊びたいですよ。身体が追い付かないんです」

「まだそのセリフを言う歳ではないでしょう」

「何かを始めるのに年齢なんて関係ありません」

「いい言葉なのに、老化の始まりだなんて……」

「切ないですね」

「思っていませんよね?」

「まさか。こうして誰もいない公園を眺めていると、時代が流れていくのを感じます」

「砂場でめちゃくちゃこどもたちが遊んでいますけど」

「静かな公園はどこか物悲しい気分になります」

「こどもたちの笑い声が響いていますけど」

「賑やかですねー」

「ねー」

「やかましいですよ、魔王さん」

「とばっちりじゃないですか」

「これだけこどもがいるのに、なぜ半分タイヤには誰もいないのですか」

「あまり人気がないのでしょうねぇ」

「かわいそうでしょう。魔王さん、出番ですよ」

「ぼくがひとりで遊んでいたら変質者です」

「聖なる見た目を最大限に活用して不審がられてください」

「効果ないじゃないですか」

「見てください、タイヤの悲しそうな目を」

「目どこ」

「あの辺です。地面に埋まっているところ」

「埋まっていたら見えませんよ」

「心の目で見るんですよ。ほら、心臓を抉り出して」

「なるほど。心の臓の目で――って、公園で何させようとしているんですか!」

「こどもたちにトラウマを植え付けたら許しませんよ」

「発案者は勇者さんですよ」

「許さないのはタイヤです」

「また軽率に自我を与えて」

「遊びに来るこどもが減るじゃないかと怒ります」

「至極最もな怒りでした」

「さて、ブランコで遊びたい子もいるでしょうし、そろそろ動きましょうか」

「旅を再開しますか?」

「いえ、まだ休憩します。よいしょっと」

「当然のようにタイヤに座りましたね」

「低い……」

「あんまり休めなさそうですね」

「椅子にもならない、飛んで遊ぶには低い、転がすことはできない。一体どうしろと」

「せめてもう少し高さがあればよいのですが」

「掘り起こしますか?」

「管理者がびっくりするのでやめましょうね」

「遊び方を書いておいてくれたらいいのに」

「それを考えるのも、ひとつの遊びであり学びなのですよ」

「何も考えたくない」

「出た、ぐーたら勇者さん」

「お菓子を食べます。あ、机にすればちょうどいい高さになりそうですよ」

「勇者さんはどこに座るのですか?」

「地」

「躊躇いもなく座りましたね」

お読みいただきありがとうございました。

見かけると腰かけたくなる衝動に襲われます。


勇者「もし機会があれば、埋める側をやってみたいです」

魔王「重労働だと思いますよ」

勇者「ここにスコップ役がいますから」

魔王「誰が馬鹿力ですか」

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