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616.会話 桜餅の話

本日もこんばんは。

桜味ってなんなんでしょうね。

「今日のおやつは近所のおばあさまからレシピを教わった桜餅ですよ~」

「桜になんの恨みがあるのですか?」

「恨みなんてありませんよ」

「でも、桜の餅なんて余程怒り狂わないと作らないでしょう」

「そもそも、お餅は怒りをこめて作るものではありませんけどね」

「見てください、この桜色の餅を。数多の花びらが練り込められているのでしょう」

「いえ、使っているのは食紅です」

「桜の花は?」

「入っていません」

「このお餅の名前は?」

「桜餅です」

「桜の花は?」

「入っていません。この質問、二回目ですよ」

「もしかして、メロンパン事件の再来ですか」

「詐欺ではありませんよ。実際に桜を使っているのですから」

「どこにですか。まさか、桜を見ながら作ったからセーフなんて言いませんよね」

「お餅を包んでいる葉が桜の葉なのですよ」

「この、どこにでもありそうなただの葉っぱが?」

「はい。どこにでもありそうなただの葉っぱですが、桜の葉です」

「ものを知らない私をからかっているのではありませんよね」

「まさか」

「そう言われると、桜の葉をちゃんと見たことはないような」

「どうしてもお花ばかり見てしまいますからね」

「食べても?」

「どうぞ。よく噛んで食べるのですよ」

「いただきます。あ、色の割に普通のお餅」

「ぼくも食べようっと」

「気をつけてくださいね、おばあちゃん」

「誰がご老体ですか」

「私の目の前にいるひとです」

「ぼくですね。ですが、だいじょうぶです。これまでお餅を喉に詰まらせて大変なことになった回数はまだ二桁台。大台突破には程遠いですから」

「どの辺に安心要素ありました?」

「餅を詰まらせても言葉は詰まらせません。ひたすらしゃべり続けます」

「黙って食べてください」

「やっぱり桜餅は桜の味がしておいしいです~」

「全然黙らない。魔王さんは桜を食べたことがあるのですか?」

「ないですよ?」

「……はて。なぜ桜の味などと言ったのでしょう」

「想像です」

「それならば、これは桜味ではない可能性があるのですね」

「勇者さんみたいなひとが桜を食べて作ったかもしれませんよ」

「誰が草花を食べる人だ。その通りですよ」

「流れるように認めた」

「正直に言うと、桜味じゃなくても、おいしければなんでもいいです」

「それもそうですね」

「桜に似た色のお餅で、桜の葉を使って、お花見をしながら食べれば、それはもう桜を食べているのと同じことだと思うのです」

「途中までよかったのに、最後で首を傾げましたよ」

「とはいえ、桜餅と命名された以上、私は確かめねばなりません」

「なにをですか?」

「桜餅はほんとうに桜の味がするのかどうか」

「今しがた、桜味じゃなくてもいいとおっしゃっていたような」

「真相を解明するべく、まずは地面に散った花弁を集めましょう」

「踏まれていないものにしてくださいね」

「花弁を両手に乗せ、口に流し込んで食べます」

「冗談みたいな光景になりそうです」

「これで、桜の味が何か判明するでしょう」

「言うだけにしてくださいね。お腹壊しますよ」

「でも、桜の味がどんなものか気になりませんか?」

「そもそも、食用のお花ではありませんから、食べようと思ったこともありませんね」

「知的好奇心の衰えは心身の劣化に直結しますよ」

「勇者さんの知的好奇心は変なところに振り切っているというか、なんというか」

「あ、桜の花びらが風に乗って飛んできました」

「きれいですね」

「せっかくです。食べてみましょう。もぐもぐ」

「どうですか? 桜の味しますか?」

「口の中が変」

「お餅をどうぞ」

「これがほんとの桜餅ですか」

お読みいただきありがとうございました。

野草を食べるのですから、桜だって食べますよね。


勇者「桜のソフトクリームもあるそうですよ」

魔王「ロマンチックな感じもグッドです」

勇者「枝がささっているのでしょうか」

魔王「スプーン用?」

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