613.会話 ヨーヨーの話
本日もこんばんは。
風船タイプのヨーヨーを家で作る人っているのでしょうか。
「見てください。買い物の帰りにヨーヨー釣りをやっていたのでゲットしてきましたよ」
「ヨーヨーってなんですか?」
「種類はいくつかありますが、これは水風船でできた玩具ですね。付属の輪ゴムを指につけて、上手に手のひらで弾いて遊ぶのですよ」
「何が楽しいのですか?」
「なんとなく楽しいのです。やってみますか?」
「ちょっとだけ。……ふむ、ふむふむ。なるほど」
「どうですか?」
「こういう遊びがあるんだなぁと」
「お祭りの屋台でよく見られます。ヨーヨー釣りの場合は、釣ることも楽しいですよ」
「魚みたいに言いますね」
「タイミングや遠近感が大事なのです。ぼくは三十回挑戦しました」
「そんなに難しいのですか」
「幼子でも数回で取れる難易度です」
「ああ、不器用ですもんね」
「見かねたお店の人が、がんばったで賞でひとつくれました」
「憐れみのヨーヨーじゃないですか」
「泣きながら遊んで帰ってきましたよ」
「威厳のいの字もない」
「ぼよよーん、ぼよよーん」
「効果音はそれなんですね」
「ヨーヨーが跳ねるたびにぼくの涙が落ちるのです」
「切ない」
「水風船に落ちた涙は、元気よく跳ねて空へと舞い上がります」
「流れが変わりましたね」
「ひとしずくの恵みにより、空に虹がかかるのですよ」
「きれいに終わりました」
「虹はぼくと勇者さんを繋ぎ、世界を渡り歩く橋となるのです」
「あ、私も歩くんですね」
「その姿を見た人間たちは、悲しい時はヨーヨーを持つようになったとか……」
「新しい文化を作らないでください」
「こどもたちがヨーヨーで遊んでいる姿は非常にかわいらしいですよ」
「なぜ私を見るのです」
「こどもたちがヨーヨーで遊んでいる姿は非常にかわいらしいからです」
「外に行けばいいじゃないですか」
「ぼくはここにいるこどもを見守りたいので」
「そうですか。あっ」
「へぶぅっ!」
「すみません。ヨーヨーが変なところに跳ねました」
「ぼくの顔面にダイレクトアタックですね」
「わざとじゃないんです」
「知っていますよ。意外と操作が難しいのです」
「上手く使えば、武器にもなるのでしょうか」
「妨害行為にはなるかと」
「水風船なら、割って嫌な気分にさせることもできます」
「水なら許せますね」
「中身がトマトスープ」
「洗濯が大変そうです……」
「弾けた瞬間にすべてを飲み干してください」
「難易度がえげつないですね」
「空中で吸引」
「ぼくをなんだと思っているのですか」
「やればできるかもしれない魔王さんです」
「可能性を信じてくださってありがとうございます」
「期待はあんまりしていませんが、がんばってください」
「素直でいいと思います」
「でも、ヨーヨーを持ちながら旅をしていると変な人じゃないですか?」
「ぼくたちは最初から割と変なので気にしなくていいですよ」
「なんでヨーヨーを持っているんだろうと思われます」
「鞄からうさぎのぬいぐるみが顔を出している時点で同じかと」
「かわいいじゃないですか」
「ヨーヨーもかわいいですよ」
「ミソラにヨーヨーを持たせれば解決ですか?」
「かわいさが倍増するだけですね」
「割れて濡れるとかわいそうなのでやめましょう」
「水風船のヨーヨーは、持ち運びには不便かもしれませんね」
「でも、せっかくもらったので、割れるまでは持っていましょう。いそいそっと」
「ぼくの光輪につけないでください」
「ずいぶん愉快なお姿ですこと」
「せめて微笑みながら言ってほしいです」
お読みいただきありがとうございました。
『ぼよよーん』とかいう擬音、ヨーヨー以外に使う時ってあるのでしょうか。
勇者「変な人だと思われれば、近寄られなくていいかもしれません」
魔王「そのためにヨーヨーを使うと?」
勇者「いいアイデアじゃないですか?」
魔王「使わずとも結構変な人ですけどね」