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610.会話 嘘をつく話

本日もこんばんは。

どんな嘘をつこうか考えている間に今日が終わるみなさまに贈るSS。


【お知らせ】

4月は春の特別編! 毎日更新が復活します。

今日から30日間、毎夜23時にお会いしましょう。

「今日は嘘をついてもいい日なんですって、勇者さん」

「私たちは常時、嘘をついているようなものですよ」

「どの辺がですか?」

「全部ですよ。勇者だか聖女だかわからない魔王さん」

「いや~、美少女ですみませんねぇ」

「しかしながら、嘘をつくのはよくないというイメージがあります。嘘つきが認められている日があるなんて、ちょっとおもしろいですね」

「あくまでも、ひとを傷つけない嘘に限りますよ。悲しいものやこわいものはだめです」

「私も何か考えてみようっと」

「ぼくも用意しました」

「魔王さん、今日観ようと思っていた映画なんですけど」

「飼い犬が人間になって悪いひとに誘拐された飼い主を助けるお話でしたよね」

「やっぱり、巨大こんにゃく星人が襲来して世界を巻き込む戦いをする映画にします」

「なんですかそれ⁉」

「嘘です」

「いつものトンデモ映画かと思いましたよ。というか、普通にありそうなんですよね」

「B級映画をなんだと思っているのですか」

「なんでもありのしっちゃかめっちゃかトンデモ映画だと思っています」

「失礼ですね。正解です」

「合ってた」

「洗濯物ってまだ干していますか?」

「はい。今日はいいお天気ですので」

「天気予報で亀の甲羅が降ってくるから早めに取り込んだ方がいいと聞きましたよ」

「亀の甲羅が降る⁉」

「亀の機嫌が悪いと高速スピンしながら頭皮を攻撃してくるそうです」

「地味にいやな攻撃ですね」

「おじさまのカツラをむしり取ることに命を懸ける亀だそうです」

「もっと他のことに力を入れるべきですよ」

「これも嘘ですけど」

「いつもの勇者さんと同じなので、まったく気づきませんでした」

「誰がいつ嘘ばかりのへんてこ話をしているというのですか」

「ここにいらっしゃるきみですが」

「失礼ですね。正解です」

「否定しないのですね」

「真実ですからね」

「そこはすんなり認めるのですか」

「嘘は最後にネタバラシすることで嘘になるのです。つき続けたらただの真実ですよ」

「では、『勇者さんはぼくの娘』と言い続けたら真実に……?」

「こういう時の思考は早いですよね。なりません」

「ぼくは長生きですので、この時代の人がすべていなくなった後も言い続けられます。ひとりひとり捕まえて、そっと耳打ちするとしましょう」

「嘘だと見破れる人がいないじゃないですか」

「こうして噓っぱち真実が世に誕生するのです」

「悪い顔ですね」

「魔王ですから」

「魔族から人間って生まれるのですか?」

「ぼくの知る限りは生まれないですね」

「誰が誰の娘でしたっけ」

「勇者さんがぼくの娘です!」

「魔王さんは魔王ですよね」

「そうですね」

「そういうことです」

「わあん! 真実はどうしてこんなにも残酷なのでしょう!」

「真実になるかもしれない嘘をつけばいいんですよ」

「『勇者と魔王はとっても仲良しでした』って?」

「仲良しの定義にもよりますね」

「それはもう、びっぐらぶで世界を包むような感じで」

「あー、確かにそれは嘘ですね」

「そんな」

「一緒に旅をしていた、でどうでしょう」

「それはただの事実ですよ」

「いずれ、『そんなまさか』と言われる日が来ますよ」

「現に今でも言われますよね」

「私がいないので証明のしようがありません。だから、あなたが言い続けないと」

「嘘ではないのに、ですか?」

「事実を真実にするための嘘つきです」

「ふ、ふむむ?」

「いつか嘘になってしまう真実を守るために、嘘をつかなければいけない」

「なぜですか?」

「嘘は、つき続ければ真実になるからです」

お読みいただきありがとうございました。

嘘みたいにくだらないSSが九割。


魔王「ちなみに、嘘をつくのは午前中までというルールがあるとかないとか」

勇者「午後につくとどうなるのですか」

魔王「ただの嘘になるのでは?」

勇者「いつもと変わりませんね」

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