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61.会話 いたずらの話

本日もこんばんは。

みんな大好きいたずらの話です。途中で何を書いているかわからなくなりました。

「みなさん、本日もこんばんは、勇者です。本日はこちらのバナナの皮を使って魔王さんにいたずらを仕掛けようと思います」

「……ぼくのいるところで言いますか、それ? それに、誰に向かってしゃべっているんです。そこ壁ですよ」

「うるせえんですよ。魔王さんはおとなしくいたずらに引っかかってください」

「理不尽。えと、どうすればよいのでしょう……?」

「勇者の勇者による勇者のための魔王いたずら大作戦、開幕です! 魔王さん、拍手するとこですよ」

「えっ? あ、パチパチ~」

「もっと楽しそうに」

「これからいたずらされるとわかっているのに無茶言いますね。パ、パチパチ~!」

「よいでしょう。まず、テーブルにスーパーデラックスハイパーいちごとチョコレートのパフェを置きます」

「お、おいしそう……! ていうか、どこから持ってきたんですかそれ」

「次に、テーブルとドアの道筋にバナナの皮を置きます」

「今しがた勇者さんが食べていたおやつですね。食べながら一瞬固まったと思ったら、こんなこと考えてたんですか」

「最後に、懐中電灯でパフェを照らしたら完成です。これで部屋に入って来た魔王さんはパフェにしか目が行きません。きっとバナナの皮を踏み、盛大に転んでくれるでしょう」

「ぼくに何を求めているんです?」

「漫画やアニメでよく見るシチュエーションですが、実際バナナの皮を踏んで転ぶなんてことあります?」

「そんな真顔で言われましても。まあ、ぼくはないですね。そもそも、バナナの皮なんてそうそう落ちているものでもありませんし」

「そうなんですよ。それなのに、いたずらと聞くと思い浮かぶのはバナナの皮。矛盾しているじゃないですか」

「イメージの問題でしょうね。カーレースでも使用されるほどですから」

「いたずらとして悪名高いバナナの皮が、ほとんど夢と理想の中にしか存在しないなんてこと、許されると思います?」

「え、いや、どうでしょう……。かなりどうでもいいかと……」

「甘い! まるでシュガースポットのように甘いんですよ。このままではバナナの皮のプライドはずたずたにされてしまいます」

「勇者さんはバナナの皮の生まれ変わりか何かですか?」

「そこで、私は勇者としてバナナの皮の名誉回復を心に決めたのです。行動に移した結果がご覧の有様です」

「勇者の使命が泣いていますよ」

「見事、全人類の悲願を果たした暁には、神々しく光り輝くあのパフェを贈呈します」

「主語が大きいですよ。光っているのは照らしているからで――」

「それでは参りましょう。みなさん、心の準備はできているか!」

「だから、誰に向かって――」

「魔王さん、どうぞ」

「一ミリも聞いてないですね。たしかにパフェは食べたいですが、あからさますぎる罠に引っかかるのも……って、勇者さんの目が見たことないくらい輝いている⁉ そ、そんなに重要イベントなんですか、バナナの皮……!」

「このいたずらを成功せずに死ぬなんて許されません。踏んだらパフェ、踏まなかったら勇者が残ります」

「天秤にかけるもの間違えていません?」

「さあ、廊下に出て、入ってきてください。下は見ないでまっすぐ前を向いて」

「ここ最近で最もしょうもなくて思考が停止しています……。ぼくはどうすればいいのでしょう……」

「がんばれ、魔王さん!」

「こんなことで応援されたくないですう⁉ えーい、魔王、いきます!」

「その調子です」

「わ、わあ~。あんなところに光り輝くパフェがー。なんておいしそうなのでしょう」

「演技下手か」

「今すぐ食べたいですうー。走って向かいましょうー」

「……どきどき」

「待っていてくださいパフェー。とりゃああー。こっ、こんなところにバナナの皮がー」

「……わくわく」

「踏んでしまいま――ひゅううおあぁぁわぁ⁉」

「……おお⁉」

「この皮、すべ、滑りますうううう! わああああパフェに突っ込むーー‼」

「おっと、ダイナミック顔面スライディング!」

「ふぇえええぇぇえぇえぇぇ~‼ パフェがああああ‼ あ、クリームおいしいです」

「……ふふっ。お疲れ様でした、魔王さん。名演技でしたね。いや、迷演技ですか」

「満足そうでよかったですが、せっかくのパフェがああ~……。ぐすん」

「ああ、それならだいじょうぶですよ。それはいたずら用のパフェですから」

「というと?」

「こうなると予想してふつうに食べる用にもうひとつ準備してあります」

「ゆ、勇者さん……! って、どんだけこのいたずらに熱意込めてるんですか」

お読みいただきありがとうございました。

バナナを食べたら皮はちゃんと捨てましょう。


勇者「このあとスタッフがおいしく――」

魔王「ぼくが捨てました」

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