607.会話 不眠の話
本日もこんばんは。
当作品はほぼSSなのですぐ読み終わって睡眠時間に優しいです。
「ふわぁ~……、んむむ……」
「おや、勇者さん。なんだか眠そうですね?」
「む…………」
「なにゆえ不満そうなお顔を?」
「あなたは快眠のようですね」
「はい。ばっちりしっかりがっつり眠れましたよ」
「む…………」
「ですから、なにゆえ不満そうなお顔なのですか?」
「私が眠れなかった理由をご存知でしょうか」
「いえ、知らないです。なんですか?」
「昨日の夜…………」
「は、はい……?」
「寝る前に…………」
「ご、ごくり……」
「読んでいた本がとてもおもしろかったので読み切ってしまったからです」
「ぼく、関係ないじゃないですか」
「はい。無関係です」
「では、なぜそのようなお顔をしているのです」
「ただの寝不足顔です。魔王さんに対してのものではありませんよ」
「そうですか。安心しました」
「魔王さんに対しての不満は他にありますから」
「あるんですね。もしよろしければ、お聞かせ願えますか?」
「私が寝ているベッドに潜り込もうとするのはやめてください」
「すみません。ぼくの本能が抑えきれなくて」
「私の寝顔を凝視するのもやめてください」
「すみません。ぼくの欲望が抑えきれなくて」
「私の……、はあ、とりあえず睡眠を妨げるのはやめてください」
「妨げるつもりはありません。きみの眠りを守っているのです」
「それはミソラにお願いしてあります」
「ぼくにもそのお役目を」
「遠慮します。安らかに眠っていてください」
「勇者さんがそばにいる方が安心するのですよ」
「赤子を見守る親?」
「そもそも、ぼくは魔族です。夜の方がパワーアップするのですよ」
「そうなんですか?」
「そんな気がします」
「気持ちの問題ですか」
「気持ちでどうにかなることって結構あるのですよ」
「早起きとか?」
「それは無理ですねぇ」
「何らかの原因がないのであれば、早起きができない理由は気持ちの問題ですよ」
「ぼくは魔族なので、朝は苦手なのです」
「こういう時だけ『魔族』を盾にしないでください」
「勇者さんは人間なので、しっかり睡眠をとってくださいね」
「寝なくても平気な魔族はいるのでしょうか」
「いますよ。概念を持たない輩は多いでしょう」
「魔王さんも?」
「本来ならそうですね」
「読みたい本がある時だけ、その能力を貸してほしいです」
「次の日に読めばいいのですよ」
「一気に読みたい派なのです」
「ゆっくり読むのもいいじゃないですか」
「魔王さんが寝坊している時間だけでもいいのです」
「それ、遠回しにぼくのねぼすけを打倒しようとしています?」
「よく気づきましたね」
「そんなにぼくを起こすのがいやなのですか」
「大変なんですよ。毎朝、今日はどんな方法で起こすか考えるのは」
「普通に起こしてくれるだけでよいのですが」
「起こし方を考えすぎて、眠れなかったこともあります」
「どこに力を入れているのですか」
「夜明けが近づくと焦り始めるので、ダイナミックな方法になりがちです」
「危険なことはやめてくださいね」
「だいじょうぶです。ロケットランチャーを発射する程度ですから」
「勇者さん、ゆっくり眠って休んでください」
「火炎放射器もいいですね」
「睡眠の大切さを思い知っています」
「チェーンソーを振り回す方法もいいでしょう」
「夜は寝る。本も置いてお布団の中に入るのです。いいですね、勇者さん」
「出刃包丁を両手に持って」
「勇者さん」
お読みいただきありがとうございました。
眠い時は寝た方がいいです。
勇者「荒々しく森から出てくるのはどうでしょう」
魔王「捕れたての生魚を持って?」
勇者「中にお米を詰めて焼くんです」
魔王「寝てください」