566.会話 ドリンクバーの話
本日もこんばんは。
ドリンクバーって何杯が平均なのでしょうか。
「飲み放題なんですか? ほんとに? ここからここまで?」
「そうですよ。好きなだけ飲んでだいじょうぶです」
「わあい。ごくごくごくごくご……?」
「どうしました?」
「お、お腹が……。これがドリンクバーの力?」
「ただの飲み過ぎかと。ご飯が食べられなくなりますよ」
「もう手遅れです。満腹勇者です。見てください、このお腹を」
「お店の中でめくらないでください⁉」
「さすがにしませんよ。私のことなんだと思ってるんですか」
「危機感崩壊系勇者さん」
「店の中で脱ぎ出したらただの犯罪者です」
「そうですね――って、なんだかお疲れのようですね」
「飲み過ぎてお腹が苦しいです」
「ご飯食べますか?」
「無理です」
「ドリンクバーではしゃぐなんて、勇者さんったらこどもですねぇ」
「水分は命に直結しますから」
「理由がおっっっっも」
「水があると、とりあえず飲んでおこうと思うのです」
「からかってごめんなさい。干からびてお詫びします」
「カラカラ魔王さんなんて世界の誰も見たくないので結構です」
「辛辣」
「ファミリー向けのお店では、水分の心配をしなくていいのですね」
「ドリンクバーに求めるものが重大すぎませんか」
「ただ、ひとつ疑問が」
「なんなりと」
「水分補給に最適なのはやはり水だと思うのですが、あまり人がいませんね」
「ジュースが人気のようですね」
「危機感が薄いのか、ジュースでも水分補給に適しているのか……」
「ファミレスで命について考えることは少ないでしょうね」
「もしかして、水分補給を目的としていない……?」
「そこまで深刻な顔をしなくても」
「新鮮な水を浴びるほど飲めるというのに、こどもたちはジュースに一直線」
「ドリンクバーの醍醐味はジュースだと言う人が多いかと」
「大人も貴重な水を通り過ぎてコーヒーやお茶を持っていきます」
「ここではあまり貴重ではないのでしょう」
「なんて贅沢な」
「ジュースを混ぜ合わせてオリジナルの飲み物を作る遊びもあるみたいですよ」
「食べ物で遊ぶのはよくないです」
「そうですね。勇者さんはいい子ちゃんです。ところで、その飲み物は?」
「オレンジジュースとりんごジュースをミックスしました」
「ナチュラルに混ぜている」
「二百パーセントジュースです」
「丸ごと果実なのはよくわかりました」
「魔王さんにはウーロン茶と緑茶と紅茶を混ぜたお茶をご用意しました」
「全部お茶」
「一度にたくさんの味を楽しむことができたらいいな」
「願望」
「私は飲みませんけど」
「ジュースミックスよりはマシな味だと思いたいです」
「おいしいですか?」
「よくわからない味がします」
「ドリンクバーの秘める力を垣間見たようですね」
「勇者さんの適度な遊び心に安心しただけです」
「不味いものを作って残したらもったいないでしょう」
「偉いですね」
「もしもの時は責任をもって魔王さんが飲み干しますけど」
「僕が飲むんですね」
「私はしっかり見守っていますから、安心してくださいね」
「ちゃっかり安全圏」
「応援しますよ。水を飲みながら」
「水分補給を欠かさない勇者の鑑」
「ドリンクバーほど混沌とした場はそうそうありませんよ」
「魔界みたいです」
「ファミレスに出現した魔界は弱そうなので却下」
「恐れを知らないこどもたちは強力ですよ」
「そうですね。さっきもジュースを五種類くらい混ぜているのを見ました」
「味の想像ができません」
「私もやってみようと思い、水を七種類ほど混ぜてみました」
「それはただの水ですね」
お読みいただきありがとうございました。
勇者さんは胃が大きいわけではないです。
魔王「お味はいかがですか?」
勇者「水です」
魔王「氷も入れてみましょう。どうですか?」
勇者「水です」




