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564.会話 魔法の杖の話その➁

本日もこんばんは。

魔法使いが持っている杖には無限の可能性があったりなかったりするSSです。

①は297話です。ご参考まで。

「魔王さん、こんなものが落ちていたのですが」

「ふむ。魔族と戦っている最中に魔法使いが落としたようですね」

「私の知っている杖と違います」

「魔法使いが使う杖は、その人にとって使いやすい形なら何でもいいのですよ」

「これは大きいですね。ほうきにもなりそうです」

「はい。杖兼ほうきの人も多いです」

「装飾品が付いていて、なんだかオシャレですね」

「杖には持つ者の特徴が出ますからね。勇者さんも作りますか?」

「作るなら、アナスタシアが持っていたタイプではなく、こちらがいいです」

「理由を訊いても?」

「いざとなったらそのまま殴れる」

「いつも物騒」

「小さいタイプだと、せいぜい目しか潰せません」

「目さえ潰したら大体勝ちですよ」

「やっぱり全身をたこ殴りにしないと」

「年齢制限の気配が」

「最後に暴力が勝つ」

「その歌詞だったら売れていませんよ」

「杖といっても、作り方も何もわかりません」

「基本的には、杖を作る専門の人に任せるらしいです。その人に合った杖の大きさや形、装飾品を魔法で見極め、時間をかけて一から作るのだとか」

「ファンタジーですね。どこで作れるのですか?」

「たぶんノスタルジア魔法学院で――」

「残念だ」

「諦めがはやい」

「私にはその資格はありません。その辺にあるもので我慢します」

「枝を拾うかと思ったら、普通の木材を持って来た勇者さんに驚きを隠せない魔王です」

「やっぱり全身をたこ殴りにできるものじゃないと」

「恨みでもあるんですか」

「先手必勝です」

「正しいとは思いますが、その木材で殴れますか?」

「ちょっと重い」

「かなり重いの間違いですよね。持てていないじゃないですか」

「これでは殴れません」

「勇者がひとを殴る画はちょっと」

「散々斬ってきて何を今更」

「いや、なんというか、木材でたこ殴りは現実的というか、暴力的というか」

「世の中に優しさがあると思ってるんですか」

「勇者ですよね?」

「すべてを等しく潰すために、木材を杖にしようと思いましたが重すぎます」

「半分にしましょうか。えいっ」

「木材が一瞬で……。ありがとうございます、これでたこ殴りに一歩近づきました」

「あ、やらない方がよかったかもしれない」

「もう半分は焚き火に使いましょう」

「たこ殴り後の焚き火は嫌な予感を抱かせますね」

「到底杖とは思えない木材を魔王さんに向けて、魔法を発動……」

「…………」

「……発動しない」

「杖じゃないですからね」

「おかしいな。私は信じているのですが」

「どうがんばっても木材ですからね」

「仕方ない。殴るか」

「早まらないでください。ぼくが杖っぽくしてあげますから。えいえいえいえいっ」

「おお、それっぽいものができました。それでは、魔法を発動……」

「…………」

「……発動しない」

「勇者さんに合っていないようですね」

「やっぱり殴るしかないじゃないですか」

「ですが、その大きさではダメージを与えられませんよ」

「ほんとだ。目しか潰せない杖になってしまった」

「じゅうぶん物騒です」

「魔族は杖なしで魔法を使い放題でいいご身分ですよね」

「魔力の塊みたいなものですから」

「それに比べて人間は、杖やら魔法道具やら木材やらで補助しないといけないなんて」

「木材は勇者さんだけです」

「使い勝手が悪いですよ」

「勇者さんも拾った杖のようなものを作れば、より簡単に魔法を使えるようになるかも」

「これじゃだめですかね」

「他人の杖は危ないですよ。下手に扱っては、魔法が暴発するかもしれません」

「まだ木材の方が有用ですね」

お読みいただきありがとうございました。

魔法も使えて殴れもする杖こそ最強なのです。


勇者「もしや、高齢の方が使っている杖ってそういう……?」

魔王「魔法使いの可能性はありますね」

勇者「主人公の危機に駆けつけるおじいさん。杖で敵をたこ殴り」

魔王「物理の方かぁ」

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