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563.会話 傾国の美女の話

本日もこんばんは。

美女キャラも出してみたい気持ちはあります。気持ちは。

「世の中にはすごい女性がいるのですね」

「勇者さんもそのひとりです!」

「いえ、私はとても国を傾けることはできませんよ」

「何を見て――って、傾国の美女特集? 勇者さんのことですか?」

「いえ、私は非力です。米俵すら持ち上げられません」

「なぜ米俵」

「だって、傾国の美女は超力持ちの女性なのでしょう?」

「……ん?」

「聞いたことがありません。国ごと持ち上げる女性がいるなんて」

「国ごと……?」

「地面が割れ、とてつもない轟音を響かせて国が空に上がるのでしょう」

「巨人でもそんなことできない……」

「気に入らない国があれば、放り投げて成敗できますね」

「ぼくの知っている傾国の美女ではないのですが」

「違うのですか?」

「違いますね。国を傾けるというのは、物理的に行うのではないのですよ」

「力持ちは?」

「可能性は否定できませんが、せいぜい米俵を持ち上げる程度かと」

「じゅうぶんすごい」

「傾国の美女とは、国を滅ぼす原因になるくらい美しい女性のことです」

「美女だと国を滅ぼせるんですか」

「国を統治すべき偉い人が、国をほっぽって女性を寵愛することで滅びを招くのです」

「……お間抜け?」

「勇者さん、しっ」

「魔王さんは美女お好きですか?」

「へっ? な、なんですか急に」

「魔王さんに美女をぶつければ、勝手に滅びるのかと思いまして」

「ぼくは美女より美少女派ですねぇ。そう、きみのことです」

「そうですか。訊くんじゃなかった」

「ですが、勝手に滅ぶことはありません。不老不死ですから」

「すべてを疎かにして、魔王の肩書が崩壊する未来は」

「もうすでにそれかと!」

「楽しそうですね。だめじゃないですか」

「ぼくの魔王たる部分とか、ほとんどの人に忘れられていると思うのです」

「私も忘れています」

「ぼくが魔王だったのは、遠い過去の話――にしたい。切実に」

「だいじょうぶですか? 国、傾けますか?」

「ぼくなら物理的に可能かもしれませんけど、やりたくないです……」

「魔王になっちゃいますもんね」

「魔王になりたくないよう、ぐすん」

「かわいそうに。諦めてください」

「慰めているようで、全然慰めてくれていない勇者さん」

「運命を受け入れろ」

「勇者さんが神様みたいなことを!」

「と言えるほど、私は偉くありません」

「言わなかった。自己肯定感地の底勇者さんだった」

「私は力持ちでもなければ美女でもありません。ただの勇者です」

「オンリーワンの肩書なんですけどね」

「魔法を使って傾けることができるのは、せいぜいお湯の入ったコップくらい」

「ぼくの頭上にあるのは気のせいでしょうか」

「思ったより加減が難しい」

「飛び跳ねた雫がぼくの頭部にあっつ」

「がんばれば米俵なら持ち上げられそうです」

「ぷるぷる震える茨が見えますよ」

「これだから貧弱は」

「勇者さん、ブーメラン」

「やはり、強い女性が世界を救うのですよ」

「傾国の美女は世界を滅ぼしたのですけど」

「やるべきことを放り投げて色恋に没頭した偉い人のせいです」

「それはそう」

「魔王さんも勇者に構っている暇があったら、魔界の統治をするべきですよ」

「魔界なんて滅べばいいです」

「でも、たくさんの魔なるものが住んでいるんでしょう?」

「なおさら滅べばいいです」

「多少は思い入れとか」

「ないです」

「砂粒程度くらい」

「ないです」

「でも、たまに魔界に行っているんですよね」

「はい。ストレス発散のため国を傾けに」

お読みいただきありがとうございました。

国を傾ける魔王さん(物理)。


魔王「破壊してもケロッとしている魔族が腹立って仕方がありません」

勇者「混沌とした世界ですね」

魔王「国転がし大会とかありますよ」

勇者「美女が優勝するのでしょうね」

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