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557.会話 外食の話

本日もこんばんは。

作るより外食の方が安い気がしてきた天目です。

「そろそろできますよ。食べられそうですか?」

「はい。外食なんて久しぶりですね」

「外で食べる食事のことを外食だと思っていますか?」

「家庭外で食事をすることですよね。ちゃんとわかっていますよ」

「びっくりしました。辞書的な説明が必要になったのかと」

「そもそも、家庭内の食事というのもおかしな話ですよね」

「そうですか?」

「旅人である私たちに、家庭などないでしょう」

「……っ⁉」

「なんでご自分を指さしているのですか?」

「ぼくの料理は家庭内だと思っておりましたゆえ」

「家族じゃあるまいし」

「勇者さん、ぼくと家族になろうよ」

「福山魔王」

「歌いましょうか?」

「やめてください、私の耳が死にます」

「そうそう勇者さん、外食ってちょっと特別な感じがしませんか?」

「ほぼ毎日外食していますので」

「そうでした。お店があると寄っちゃいますもんね」

「旅人ならそんなものでしょう。魔王さんが料理する方が珍しいのでは?」

「えええ~? だってだって、勇者さんが、ぼくのご飯が食べたいって顔するから~」

「言い方がうざったいです」

「勇者さんもドストレートですよね」

「おいしいものを食べたいと言っているだけです」

「遠回しに褒められている……?」

「今日の夕飯はなんですか?」

「お野菜のスープと事前に買っておいたパンを火で炙ったものですよ」

「わあい」

「あまり凝ったものを作れないのがデメリットですが、開放感はありますね」

「旅人が凝ったものを作るのがおかしいのですよ」

「せっかく旅をしているのです。どうですか、料理系旅物語を目指しませんか?」

「私、食べるだけですけど」

「材料や調理方法を説明するだけで文字数を稼ぐことができます」

「そういうこと言わないでください」

「くだらない会話の間においしい料理を挟めば、お腹を空かせたひもじいひとたちがわらわら寄ってくると思うんですよ。おびき寄せたら、ぼくが勇者さんをセールスします」

「もう既に目的が変わっていますよ」

「この手で胃袋を掴もうと思います」

「物理?」

「んもう、勇者さんったら、直接胃袋を掴んだら死んでしまうでしょう?」

「できないとは言わないところがリアルですよね」

「ちなみに、勇者さんの胃袋はもう掴んだ自信があるのですが、どうでしょう?」

「胃痛はないですけど」

「あ、えっと、言葉の表現の方で」

「スープおいしいです」

「無事に掴めているようですね。あの日々に感謝しないといけません」

「パンもおいしい」

「パン屋さんに感謝しないと」

「体に優しい味がします。刺激が足りないですね」

「辛いものをご所望ですか? ちょっと探してみますね」

「こんなところに魔物の羽根が」

「猛毒!」

「外食していると、よく落ちているんですよねぇ。魔物の残骸」

「形が残るのは強いものだけです。はい、回収しますよ」

「これをお野菜のスープに入れるとどうなりますか?」

「不味くなります」

「お野菜が悲しみますか?」

「大泣きしますよ、ぼくが」

「ちょっと揺らぎますね」

「迷わず捨ててくださいよう」

「よいしょっと」

「なんでぼくの頭に乗せるんですか」

「吸収するのかと思いまして」

「いまは演出する必要もないので、これはゴミです」

「生ゴミの中に入れられた」

「外で食べるご飯はおいしいですが、魔なるものの邪魔だけが腹立ちます」

「じゃあ、魔王さんは家庭内がお好みなんですか」

「ぼくの場合は魔王城内ですね」

「うまいこと言った感じはありませんね」

「ぼくが上手なのは料理だけですから」

お読みいただきありがとうございました。

料理だけは上手な魔王さん。料理だけは。


魔王「ぼくはなるべく家庭内で食事をしたいです」

勇者「何か理由でも?」

魔王「外にいると、勇者さんがその辺の草を食べようとするからです」

勇者「すみません、つい」

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