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554.会話 井戸の話

本日もこんばんは。

井戸の日と聞いて、書かずにはいられない井戸SS。

「おや、古井戸ですね。危ないので、近寄らないようにしましょう」

「…………」

「どうしました?」

「私は知っています。井戸からおばけが出てくるんですよね」

「それはホラー映画の観すぎかと」

「井戸から髪の長い女性の幽霊が出てくると全世界の六分一の人が言っていました」

「全世界の六分一⁉ ……多い……のでしょうか?」

「近寄ると井戸パワーによって吸い込まれるそうです」

「井戸パワー?」

「吸い込まれた先には、摩訶不思議な地下世界が広がり、探検可」

「探検可」

「超激レアのお宝もゲットできたりできなかったりするらしいです」

「ホラー映画じゃなくてアクションアドベンチャー映画でしたか」

「てってれてー、てってれー」

「お馴染みの音楽ですね」

「…………」

「急に黙らないでください。だいじょうぶですか?」

「……視界に井戸があると、どうにも……」

「恐怖を軽減させるために考古学者勇者さんになっていたのですね」

「失われた勇者になっちゃうので」

「それは大変です。すぐにチェーンメールを回しましょう」

「また古いやつが」

「このメールを二週間と九十六時間以内に回さないと不幸になります、と」

「かなり猶予あるな」

「不幸の内容としましては、タンスの角に小指をぶつける、煮物の味が濃すぎる」

「絶妙」

「暑いかと思って薄着で外出したら想像以上に寒い」

「逆ならまだいいんですけどね」

「炊飯器をセットし忘れて、朝、お米が炊けていない」

「いそがしい時は絶望してしまいます」

「間違えて同じ巻のマンガを買ってしまう」

「布教用にしましょう」

「こんなもんでしょうか」

「まあいいかで流せる程度の不幸で安心しました」

「では、最後に、テレビから某幽霊が登場する」

「そ、それは……」

「かつ、買ったばかりの高いテレビを壊される」

「うわあやめろ」

「知らないうちに家の敷地内に井戸が出現し、温泉が湧く」

「そ、それは……、いいような?」

「某幽霊さんの通勤経路です」

「毎日温泉に入れるんですか? お肌すべすべになりそうです」

「使用料を支払えば、どなたでも利用可」

「家で温泉なんて贅沢ですね」

「追加料金を支払うと、テレビから登場するためのレクチャーもしてくれるそうです」

「死んだあとのことまで考えてくれて、ありがたい話です」

「今は井戸の世界に本社を置く社長なんだとか」

「出世しましたね。ところで、普段の私みたいな話をしていますが、どうしました?」

「勇者さんが昨日、寝落ちした映画の内容ですよ」

「魔王さん、観たのですね」

「惰性で」

「おもしろかったですか?」

「会社の経営が傾きかけたところで、脅かした人間から助けられるシーンはもう……」

「もう?」

「感動したのですが、なんで感動しているのか意味がわからなくなりました」

「正気に戻っちゃいけませんよ」

「ぼく、なんであんな映画観たのでしょう」

「たまにありますよね。私はいま、何をしているのだろうと思う時」

「この時間を使って、お菓子を作ったり本を読んだり勇者さんとあれやそれやを想像したりできたのに、ぼくはなぜ思考破壊展開どったんばったんとんでも映画を観ているのか」

「途中に聞こえたのは、聞こえなかったことにしてあげます」

「ぼくはこれから、井戸を見るたびにあの映画を思い出す呪いにかかってしまった……」

「一番こわいですね」

「もう純粋な気持ちで井戸を見ることはできない……!」

「邪な気持ちで井戸を見てたんですか?」

「ぼくはこわいんです」

「井戸がですか?」

「倒産を免れた会社に、新たな危機が到来した映画第二弾まで観てしまった自分が」

「それは恐怖ですね」

「呪われちゃったよう」

お読みいただきありがとうございました。

とんでも展開映画を観ていると、たまに呪われた気分になります。


勇者「井戸の中って住めるのでしょうか」

魔王「井戸の底は地上より酸素濃度が低いことがありますので、危険ですよ」

勇者「あの世行きですか?」

魔王「真っ逆さまのまっしぐらです。略して『さまとぐら』です」

勇者「嫌な絵本だ」

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