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553.会話 落ち葉の話

本日もこんばんは。

秋といえば、そう、おいしい落ち葉の季節ですね。

「あれ、勇者さんー? どこですかー?」

「ここです」

「えっ、どこですか?」

「足元です」

「うわぁ! なにしてるんですか、勇者さん!」

「ちょっと肌寒かったので、あったまっていたところです」

「事件現場かと思いましたよ」

「落ち葉って暖かいんです。自然のお布団ですね」

「ぼくは突然鼓動が爆速になって熱くなってきました」

「詐欺心臓でもそうなるのですね」

「ぼくもびっくりです。心臓を労わるためにも人間に戻ってください」

「土の中で暮らしたい」

「土葬ですか?」

「人間いつかは土の下」

「うわ落ち葉まみれ」

「パリパリした食感が癖になりますね」

「なりません。食べないでください」

「食べようとは思っていません。埋まった結果、口の中に入っただけです」

「埋まるからですよ。気づかなくて踏んだらどうするのですか」

「踏んでいますと言うだけです」

「ぼくが勇者さんに踏まれるならまだしも、ぼくが勇者さんを踏むなんて!」

「……ん?」

「そんなこと、あってはならないのですよ。誰にも譲りません」

「なんか変なこと言ってるなぁ」

「まったくもう、悪い落ち葉はぼくが回収しますからね」

「今日の焚き火に使いますか?」

「燃えやすいですが、すぐ燃え尽きるので木の枝も拾いましょうか」

「山ひとつ分くらいの落ち葉ならだいじょうぶですかね」

「それはもう山火事なんですよ」

「木の枝を拾うのがめんどうで」

「落ち葉で隠れていますもんね。潜った時にありませんでしたか?」

「あいにく、伝説の枝くらいしか見つかりませんでした」

「久しぶりのご登場ですね」

「これ一本では、三時間程度しかもちません」

「その細枝で三時間はえげつないですよ」

「太い伝説の枝なら九時間は余裕なのに……」

「またぼくの知らない世界が」

「ちなみに、伝説の枝についている葉が落ち葉になると、どうなると思いますか?」

「とんでもない力があるのでしょうね。ええと、大爆発とか?」

「命を吸い取ります」

「こわいよう」

「落ち葉一枚で山ひとつ分の命を吸い取れます」

「山ひとつ分って東〇ドーム的な単位なんですか?」

「二枚で山ふたつ」

「伝説の枝って正義寄りの力だと思っていたのですが」

「正義も見る場所を変えれば悪になるのですよ」

「ふ、深い……!」

「この落ち葉の山、とても深いです。見てください、どんどん吸い込まれる。私が」

「窪みがあるのでしょう。危ないので回収します、きみを」

「こういう落ち葉の塊に火をつけたら即席キャンプファイヤーですよ」

「簡単山火事作戦になるのでやめてください」

「山で迷った時のために、火をつけながら歩くのはどうでしょう」

「炎上版ヘンゼルとグレーテル」

「消化に時間がかかりそうですね」

「これだけ落ち葉があれば――って、どんな姿ですか、それ」

「落ち葉を身につければ、山の中では保護色のようになるかと」

「新種の妖怪かと思いました」

「存在を隠すには最適ですし、いざとなれば燃やせます」

「今日の勇者さん、燃やすことしか考えてないんですか?」

「人間にとってぬくもりは重要です」

「であれば、ぼくがとびきりのハグをしましょう」

「わあ、こんなところに磔にぴったりの木が」

「ハグは今度にします」

「そろそろ野宿の準備をした方がよさそうですね」

「大人しく木の枝を集めるとしましょう」

「落ち葉まみれ勇者は必要ですか?」

「落ち葉を落としていただけたらありがたいです」

「いそいそ」

「服を脱げとは言っていませんよ⁉」

「この方が早いかなって」

お読みいただきありがとうございました。

焚き火の時は落ち葉より木の枝です。


魔王「危機感というものをですねぇ!」

勇者「落ち葉で隠せばいいかなって」

魔王「本末転倒ですよ」

勇者「めんどうな魔王さんだ」

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