549.会話 ハロウィンの話その③
本日もこんばんは。
ハロウィンSSがもう三回目ということに驚きを隠せません。
その①は第141話、その➁は第385話です。ご参考まで。
「かぼちゃどーん!」
「もしかして、あれですか」
「はい、あれです。今日はハロウィ――」
「かぼちゃを投げ合って窓ガラスを何枚割れるか競う年に一度のイベントですよね」
「またぼくの知らんものを作り出して」
「お任せください。全身全霊で割ってきます」
「なんで楽しそうなんですか。ストレス溜まってます?」
「窓ガラスは割るために存在しているでしょう」
「くもりなきまなこで言わないでください。違います」
「今回は仮装していないのですね。予算尽きました?」
「いえ、今回は儀式的なハロウィンにしようと思いまして」
「というと?」
「古くは、この日に死んだ人の魂が家に帰ってきたり、悪霊や魔女が町にやってきたりすると信じられていたそうです。仮装は悪霊から身を守るための手段だったらしいですよ」
「悪霊がくるんですか。おばけ……?」
「はい、おばけです」
「なんで仮装用の衣装がないんですか。今からでも買いに行きましょう」
「だ、だいじょうぶですよ。ぼくたちは常時仮装みたいなものだと前も言いましたし」
「お、おばけが来たらどうするんですか」
「ぼくがパンチしますから」
「どのくらいの威力で?」
「成人男性を倒すくらいでいいかと」
「だめです。巨石を粉々にする威力にしてください」
「悪霊涙目ですよ」
「他にはないんですか?」
「ありますよ。ジャック・オー・ランタンです。今回の主役ですね」
「前にも見ましたね」
「勇者さんと作ろうとして、まだ作れていませんでしたから」
「この強面かぼちゃが悪霊と関係あるのですか」
「魔除けの効果があり、怖い顔にすることで悪霊を追い払うとされています」
「見たら死ぬくらい怖い顔にしましょう」
「悪霊なのですでに死んでいるのですけど」
「さあ、はやく作りましょう。百個くらい作りましょう」
「ひとり一つでいいと思いますが……。まずはかぼちゃの底に丸く印をつけます」
「次はどうしますか?」
「ナイフで切れ込みを入れ、くり抜いていきます」
「次はどうしますか?」
「かぼちゃの中身を取り出していきます」
「次はどう――重労働ですね、これ」
「側面に顔を描いたら、ナイフで切り取って完成ですよ」
「怖い顔のジャック・オー・ランタンになっていますか?」
「どれどれ~……、こっっっわ。顔こっっっわ」
「私なんてまだまだですよ」
「いえ、じゅうぶんです。怖すぎます。こどもどころか大人も泣きます」
「この程度で?」
「悪霊がドン引きして腰抜かして怯えて泣きながら逃げていく顔です」
「そうですかねぇ」
「勇者さんは平気なんですか?」
「なにがですか?」
「けろっとしている。ホラー映画の賜物でしょうか」
「そうだ、ケチャップ使おう」
「かぼちゃを食べるには調理しないと――じゃないですね、嫌な予感がします」
「血濡れジャック・オー・ランタンにします」
「ぼくはとんでもない提案をしてしまった気がしますよ」
「これで誰も近寄れないでしょう」
「ぼくですら血の気が引いた気分です」
「あ、魔除けでしたっけ。魔王さんにも効くんですか?」
「あまりの出来の良さに恐れおののいています」
「よし、もっと作ろう」
「一個でじゅうぶんですよ。百人力です」
「悪霊がやってくるんですよね? 今まで死んだ人間が何人いると思っているのですか」
「今まで死んだ人が全員悪霊になるわけではありませんからね」
「大体悪霊ですよ人間なんて」
「闇を見せないでください今日は楽しいイベントなのですよ落ち着いてかぼちゃ置いて」
「魔王さん、かぼちゃが足りません」
「だ、だいじょうぶですって。生きている人間も多いのですから悪霊は分散されます」
「嫌ですもっと作りますかぼちゃください」
「とりあえず作ったジャック・オー・ランタンを窓際に飾りましょうか」
「血濡れかぼちゃを隙間なく敷き詰めます」
「趣旨は変わっていないのに違うイベントのようですよ」
お読みいただきありがとうございました。
月日の流れを感じます。ハッピーハロウィン。
勇者「なるほど、魔除けでパンプキンスイーツを食べるということですね」
魔王「そこまで考えなくてもいいと思いますが」
勇者「ジャック・オー・ランタンの中身で作られているので魔除け効果抜群ですね」
魔王「魔除け以上の効果がありそうですよ」




