548.会話 テディベアの話
本日もこんばんは。
テディベアと勇者さんと軍団。
「勇者さん、テディベア専門店ですって! かわいい~!」
「くまさんいっぱい」
「せっかくですし、見て行きますか?」
「……見るだけならいいですかね?」
「お好きなようにしていただいていいですよ。なんで難しいお顔?」
「見るだけ……。見るだけ……。くまさんいっぱいだ」
「テディベアなどのぬいぐるみは、以前もお話したように精神を安定させる癒しの効果があるとされています。たくさんのテディベアに囲まれると、心がぽかぽかしてきますね」
「一体いくつあるのでしょう」
「お店全体にあるようですから、百や二百は優に超えるでしょうね」
「わあ……」
「勇者さん、うれしそうですね」
「こんなにたくさんのテディベアに囲まれて生活しているとしたら、と考えたら……」
「最高にかわいいですね」
「毎日ふわふわです」
「最高にかわいいですね……」
「どこに寝転がってもテディベアが受け止めてくれるのでしょう」
「最高にかわいいですね……!」
「語彙力どうしたんですか?」
「ぼくとしては、千個のぬいぐるみたちと旅をしたいです」
「突然の宣言」
「もふもふ防御というものをご存知ですか?」
「知らないけど察しました」
「かわいいテディベアたちで防御しながら、そのかわいさで敵を倒す戦法です」
「それが通用するのはもっと平和な世界ですよ」
「ぼくには通用しますよ?」
「頭の中、お花畑ですもんね」
「勇者さんがぬいぐるみを抱きしめているだけで白旗を振ります」
「弱すぎて心配」
「ただでさえかわいいのに、テディベア軍団が加わったらどうなるんですか?」
「どうなるんですか?」
「ぼくがしんじゃう」
「勝手にしてください」
「魔王城の勇者さん専用部屋に無数のぬいぐるみ用意しておきますね」
「勝手にし――まあ、勝手にしてください」
「どうですか? テディベア買っていきます?」
「これ以上は持って行けませんってば。諦めてください」
「あああああ~……。ぼくのはっぴーらいふがぁぁぁぁぁ~……」
「見るだけと言ったでしょう」
「勇者さんの背後にテディベアを円形に配置するのはどうでしょう」
「光背か」
「それぞれが個の能力を持ち、勇者さんを守ってくれます」
「ファンタジーワールド版仏像」
「攻撃力はそんなにないのですが、山を削る程度は可能です」
「テディベアの攻撃力とは一体」
「ふわふわおててあたっく」
「うわ、ひらがな攻撃だ」
「ふわふわあんよあたっく」
「ひらがなやめろ」
「我が牙で貴様の命を奪い取るアタック」
「野生の熊に戻っちゃった」
「こんな感じで、テディベアには無限の可能性があるのですよ」
「かなり温度差ありましたけどね」
「勇者さんは勇者パーティーを作っていません」
「めんどうですから」
「テディベア軍団ならどうでしょう」
「水曜日っぽい」
「平和な時は癒しに、危険な時は頼れる軍団になるテディベア」
「後半は妄想ですよね」
「今ならセット購入で五パーセントオフ」
「売る側のひと?」
「さらにさらに、三十分以内の購入で後光リングもお付けします」
「これ通販番組でしたっけ」
「オペレーター増員中!」
「魔王さんしかいないじゃないですか」
「欲しい時はぼくに言ってくださいね」
「だいじょうぶです。さあ、そろそろ行きますよ」
「買わないんですか、テディベア軍団!」
「道行く人から変な目で見られることは確実ですからね」
「それは今更のような」
お読みいただきありがとうございました。
光背は仏様の後ろについているあれです。それのテディベアバージョンの話をしていました。意味がわかりませんね。
魔王「たくさんのぬいぐるみの中に勇者さんを放り込みたい」
勇者「謎の願望ですね」
魔王「想像しただけで幸せです」
勇者「便利な欲ですね」




