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545.会話 忍者の話

本日もこんばんは。

現実的な方とフィクションの方がありますが、今回は後者の忍者のお話です。

「魔王さん、人間も口から火を吐けるのですね」

「吐けませんよ? また変な映画でも観――あああ忍者のことですかなるほど」

「忍法というものを学べば、私も炙り料理食べ放題です」

「女性の場合はくのいちと呼ぶのですが、彼らは少し特殊といいますか」

「魔法とは違うのでしょうか」

「そうですね。忍者が使用する技はすべて技術や道具によるものらしいです」

「すごいです。口の中にガスバーナーを入れるのは至難の業ですよ」

「ガスバーナーは入ってないですね」

「じゃあ、どうやって火を出しているのですか?」

「ぼくもそこまでは。ですが、謎が多い者たちであることは確かです」

「忍者の勇者いました?」

「いましたよ。とても人間とは思えない技で攻撃してきました」

「強かったですか?」

「強かったです。勇者の力の部分が」

「そっちか」

「忍者はスパイの役割を担っていました。勇者さんが見たのはフィクションの部分です」

「私たちもフィクションみたいなものですけどね」

「イメージの中にある忍法は危険なものも多いので、真似しちゃいけませんよ」

「わかりました。口の中に入れるのはライターにします」

「そういう意味じゃないのですよ」

「私も直火焼きしたいです」

「直火の直がそのまま過ぎるのです」

「魔王さんが基本的に火を通せば大体だいじょうぶって言うから」

「そうですけど、そうなんですけどね」

「食べる時に直火焼きすれば時短です」

「絵面が何の作品かわかりませんよ」

「勇者と魔王の物語です」

「どの辺が?」

「勇者と魔王がいればいいかなって」

「傍から見ると逆――あ、いや、逆でもいることになりますね」

「これで全て解決ですね」

「いつも間違っているのでむしろ正解というか。いえ、間違いなんですけど」

「そういうわけで、私、忍者になります」

「勇者と魔王の物語じゃなくなりますよ」

「忍者と魔王と時々勇者の物語にすれば誤魔化せます」

「登場人物が増えるのですか」

「私が一人二役です」

「で、できますか?」

「……できないかも」

「無理しなくていいんですよ」

「自分だけでも大変なのに、もうひとりなんて……」

「自分だけはがんばってほしいのですが」

「一人何百役のコツってありますか?」

「えっ、ぼくですか? 何百役って一体」

「ヒント、これまでの魔王さん」

「なるほど。コツなんてありません。自分に素直にいるだけですよ」

「演技であることすら演技。ふむふむ、考える前に体が動くようになれば、一人前の忍者になれるのですね。相手にそれと気づかせない自然な動作……、高度な技です」

「ぼくは忍者じゃないですよ」

「その言葉すら、すでに忍法のひとつ……。これが影分身の術ですね」

「いえ、ひとりです」

「魔王さんの影分身は高度すぎて、時代を超えて存在するんですよね」

「しませんよ。いつの時代もぼくひとりです」

「ぼっちってこと?」

「ちがっ、違いますよう! そりゃ、孤独時代も長かったですけど、最近は人間と関わる時間の方が長いですし、今は勇者さんと一緒ですし、ぼっちじゃないです!」

「かわいそう」

「い、いいのです。勇者さんとともにいられれば孤独なんてへっちゃらです」

「さみしい忍者さん」

「魔王です、魔王」

「さみしい魔王さん」

「だいじょうぶですよ。過去もぼくとともにありますから」

「影分身パーティー?」

「そうじゃなくて」

「でもそれ、結局は全部魔王さんってことですよね。つまりぼっちパーティー?」

「ひとりでパーティーしたことなんて数十回くらいしかないですよ」

「結構あるな」

「そうだ。今度パーティーしましょう。ぼく、余興で火を吐きますよ」

「いいですね。ガスバーナー用意しておきます」

「いえ、あの、魔法で、火を……」

お読みいただきありがとうございました。

忍者って器用なイメージがあるので、勇者さんは適性がありそうです。


勇者「水の中でも呼吸ができるそうですよ」

魔王「筒を使うんでしたっけ」

勇者「ストローでもいけますかね?」

魔王「藁にも縋るってやつですね」

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