532.会話 食いしん坊の話
本日もこんばんは。
食に関するSSも多い。
「こんにちは、食いしん坊勇者さん」
「こんにちは、変な名前をつけないでください魔王さん」
「いっぱい食べるきみが好き」
「どこかで聞いたようなフレーズですね」
「勇者さんはよく食べますが、大食いというわけではありません。食いしん坊には『おいしいものを食べることが好きな人』という意味もあるそうですよ。勇者さんのことです」
「やかましいです」
「ぼくは食事をする勇者さんを見ることが好きです」
「わざわざ言わなくてもいいですよ」
「わざわざ言わなくてもご存知ということですね。ありがとうございます」
「都合のいい解釈をする脳みそですね」
「光栄です」
「さっきのは褒め言葉じゃありません」
「うれしいのでデザートを作りました。シフォンケーキです」
「さっきのは褒め言葉です」
「撤回がはやい勇者さんもすてきですね」
「シフォンケーキ、シフォンケーキ」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁかわいい。切り分けましたのでお食べください」
「わぁい、いただきます」
「食べることが好きな勇者さんに食べ物を提供する喜び」
「魔王さんは食べないんですか?」
「もういっぱいですよ。胸が」
「そうは見えませんけど」
「こんなに幸せそうな美少女が目の前にいるのに?」
「絶壁しか見えません」
「ぼくの胸の話じゃなくて」
「違うんですか?」
「胸ですけど、胸じゃないというか」
「難しいことを言いますね。はい、シフォンケーキどうぞ」
「い、いいんですか?」
「甘いものお好きでしょう」
「勇者さんってばお優しい~~~~!」
「お野菜? ちゃんとバランスよく食べるからだいじょうぶですよ」
「聴覚はテキトーなところもいいと思います」
「ふわふわに焼けていますね。不器用なのに不思議です」
「料理の腕なら誰にも負ける気はしません」
「料理対決があったらおもしろそうですね」
「優勝してみせますよ!」
「私も参加しよう」
「一度話し合いましょうか」
「料理対決なら食べる人が必要ですよね」
「あ、うれしそうなお顔。かわいい~。じゃない、そうですね。審査員が必要です」
「私、それやりたいです」
「どうぞどうぞ。おいしいものを食べてくださいね」
「あ、でも、ちょっと困ったことがあります」
「なんですか?」
「私、魔王さんの料理ばかり食べているので、他の人の味を知りません」
「ふむ?」
「あなたの料理に慣れ過ぎて、ちゃんと審査できるか心配です」
「ふむふむ。ふーむ。なるほど。かわいすぎるな?」
「おいしいものは全部百点をつけちゃうかもしれません」
「それでいいのですよ。ぼくは百億点をたたき出しますから」
「満点はいくつですか?」
「百億飛んで三点です」
「むしろ、取れなかった三点は何だったんですか」
「スプーンを逆向きに置いてしまったことです」
「料理の味に関係なかった」
「マナー講師に怒られる前に、自ら三点を差し出しました」
「そういう形式?」
「ですが、日頃から勇者さんの血肉となる食事を提供しているという点を加味すると、ぼくが総合優勝ですね。ありがとう、ありがとう、花吹雪はいりませんよ」
「幻覚花吹雪に流されそうになりましたが、血肉って言った?」
「光栄です」
「褒めてない」
「では、表現を変えましょう。ぼくが明日の勇者さんをつくる」
「だめ」
「だめかぁ」
「シフォンケーキに乗せるホイップクリームがあれば許します」
「もちろんです。どうぞ」
「じゃあ、いっか」
お読みいただきありがとうございました。
魔王さんもチョロいですが、勇者さんも大概チョロいです。
魔王「勇者さんが食事しているのを見ると幸せなのです」
勇者「親の目線」
魔王「ちゃんと噛めて偉いですね……」
勇者「ねえやっぱり私のこと赤ちゃんだと思ってます?」




