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531.会話 昼寝の話

本日もこんばんは。

眠りに関するSSが多い。

「勇者さん、いくら今日が休養の日だからといって、寝すぎはいけませんよ」

「人間いつかは死ぬのです。いま寝なきゃいつ寝るというのですか」

「夜です」

「いまも夜だったような気がしないような気もしません」

「昼ですからね。起きてください」

「待ってください。寝ていません。目を閉じて横になっているだけです」

「そうしているうちに寝るのが勇者さんです」

「誰かの魔法攻撃だと思うんですよ。ありませんか、睡眠魔法?」

「あると思いますけど、ここに魔法使いはいません」

「もしかしたら、ワンチャン」

「ありません。いたら魔力を感じるはずです」

「魔力を隠すのがとてもお上手な可能性は」

「そもそも、人の気配がありませんよ」

「となると、私も人を辞めたということですか?」

「その場合、どうなるのです?」

「いくらでもお昼寝していい」

「人外に何の希望を抱いているのですか」

「長生きだから、そのぶん長く眠らないといけないとかってあります?」

「あっ、それいいですね。ぼくのねぼすけの理由に使わせていただきます」

「使うなやめろ」

「三年後に起こしてください」

「起きたら隣に私の死体」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「うるさいです」

「勇者さんが変なこと言うからです」

「昼寝の体勢と同じものを夜の睡眠でもやろうとしても眠れない話ですよね」

「聞いたことありませんよ。何の話ですか?」

「昼寝の時って、変な体勢でも割と気持ちよく眠れませんか?」

「普段からダイナミック寝相の勇者さんに言われましても」

「失礼ですね。あれはわざとですよ」

「ぼくの顔めがけて腕を置くのも?」

「意図的に行っております」

「申告ありがとうございます。やめてください」

「うれしくないんですか?」

「抱きしめようとしたら逃げるじゃないですか」

「嫌ですからね」

「起きているなら落ち着いた体勢で寝てください」

「夜のガチ睡眠の時は、ちゃんとお布団に入る世界の八十五不思議」

「多いですね」

「私はどこでも寝られます。いつでも頼ってください」

「何を頼るのですか?」

「ベッドで眠りたいけど、ひとつしかない時」

「勇者さんを地に放り投げ、ぼくがベッドで眠るということですか?」

「そうで――」

「冗談じゃありません! 一緒に入れば解決です!」

「そうなるから地面で寝るって言ってんですよ」

「地べたに寝たら休まらないでしょう」

「平気です。私はどんな環境でも休養できる訓練を積んでいます」

「それ、たぶん訓練じゃないですよ」

「どやぁ」

「そんなことを誇らないでほしい。なぜならぼくにダメージが入るから」

「なんで苦しそうなんですか? ベッドで休みます?」

「いえ、勇者さんが使ってください」

「でも、さっきは起きろって」

「いいです。お昼寝してください。ぼくのために」

「意味がわからないよ」

「ぼくは自分を安らげるために、勇者さんコレクションを眺めてきます」

「休養の方法がなんか、あれですね。詳しくは言いませんけど、あれ」

「勇者さんが珍しく動かした表情から伝わってきました」

「がんばったかいがありましたね」

「それでがんばったのですか」

「かなり疲弊しました。もうベッドから起き上がれません」

「最初からですよね?」

「私、もしかして地面にくっついて生きる生命体だったのではないでしょうか」

「人間は地に足つけて生きていますよね」

「こどもの大発見はとりあえず褒めるものですよ」

「褒めてほしかったのですか? おー、よしよしよしよしすりすりすりしましょうか」

「結構です。あっち行ってください」

「そういえば、ぼく、勇者さんコレクションより勇者さん本体の方が元気出ます」

「表現が絶妙に気味わるい」

お読みいただきありがとうございました。

勇者さんは木の上でも寝られると思います。


勇者「ベッドがふかふかなのが悪いです」

魔王「責任転嫁はいけませんよ」

勇者「じゃあ、魔王さんが悪い」

魔王「それならいいです。よくないですけど」



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