528.会話 宿題の話
本日もこんばんは。
宿題の日と聞いて、書くしかないかもしれないと思って書いたSSをどうぞ。
「勇者たる者、魔なるものについての知識を持っているべきです。ということで、どん」
「なんですか、この大量の紙は」
「勇者さん専用の宿題です」
「宿題……? 何のですか」
「もちろん、魔なるものについてです。きみは勇者なのに知らないことが多すぎます」
「私が悪いのでしょうか」
「いいえ。神様が悪いです。しかし、いざという時に身を守ってくれるのは神様ではなく、ぼくや知識、経験です」
「ちゃっかり魔王さんがいたな」
「勇者として、知っているべきことを問題形式に書き連ねました。お使いください」
「第一章、勇者の力について。第一問、勇者の力の効果を三つ書きなさい……ですか」
「実際は、三つどころではありませんけどね」
「えーっと、なんだろう。たしか、なんかこう、魔の力をおりゃーみたいな」
「これを正解にしてよいのか……」
「不正解にしてくださいね。あまり甘やかさないでください」
「ぐぅ……。で、では……、ぐはっ……、不正解です……、うあああああ!」
「なんで魔王さんがダメージを受けているのですか」
「勇者さんのすべてが正解だと信じているからです!」
「信頼が重い」
「とはいえ、問題は間違いです。正解はこちらの紙に一覧にしてありますので」
「多くない?」
「言ったじゃないですか。三つどころではないと」
「それにしても多くないですか? 私、魔族に効果的であるくらいかと」
「勇者の力は魔なるものにとって最も効果的ですが、その逆もありますからね」
「でも、前に『勇者にこの力は効かない』みたいなことを聞いたような」
「色々あるんですよ……、色々……」
「なんだかお疲れのようですね」
「そうなんですよ……、ほんとにもう……、ほんとにね……」
「さて、二問目。……ちょっと待ってください、読めないのですが」
「魔族が使っていた文字です。読めたら便利かと思いまして」
「人間が読めるものなのですか?」
「いえ、読めないですよ」
「なんなんですか。怒りますよ」
「ぷんすか勇者さんを見たくて」
「二問目、それだけのために用意したんですか?」
「はい。わざわざテキトーな魔族も倒してきました」
「暇なんですか?」
「勇者さんの宿題を作るのにいそがしいですよ」
「暇ってことですね。それにしても宿題って、全部終わったらご褒美があるとかでないとやる気が出ません。でもまあ、魔王さんのことですから、その辺は……、ちらり」
「もちろんご用意しております!」
「安心と信頼の魔王さん」
「今日の夕飯はお値段高めのお肉で焼肉ですよ~」
「ゆ、夕飯までのこの量の宿題を終わらせるのは無理ですよ」
「だいじょうぶです。終わらなくても夕飯は食べていただきますから」
「ご褒美とは……?」
「終わるまで追加していきます」
「よくわかんない」
「宿題って学生っぽさがあると思いませんか?」
「何かが見えてきましたね」
「学校に通う勇者さんの妄想が捗ります」
「ふーん……」
「きっと成績もトップですよっ。天才と言われてちやほやされる勇者さんが見えます!」
「相変わらず幻覚」
「さすが勇者さん。尊敬します勇者さん。憧れです勇者さん。ついていきます勇者さん」
「幻覚の中の生徒ですか?」
「その中のひとりがぼくです」
「混ざらないでください」
「教師に課された課題もささっと解いてしまう優秀な勇者さん。それがきみです」
「この宿題、全然わからないのですが」
「勇者なのに?」
「勇者なのに」
「おかしいですね。勇者なら、そこまで難しくないように作ったのですが」
「私、勇者じゃなかったのかもしれません」
「そうですねぇ。んなわけあるかい。紛れもなく勇者ですよ」
「でも、全然わかんない」
「ぼくも力を貸しますよ。どれどれ……、三問目の答えはですね、こうです」
「ありがとうございます。助かります」
「四問目はこれが答え――って、ぼくがやっちゃ意味ないですよ」
「終わればいいんですよ、終われば」
お読みいただきありがとうございました。
宿題は魔王さんがほぼ解きました。
魔王「ぼくが解説すれば同じことかなと思いました」
勇者「その解説はどのくらいかかりますか?」
魔王「少なく見積もって三週間は」
勇者「さーて、旅を続けましょうか」




