524.会話 こぶとりじいさんの話
本日もこんばんは。
ふふっとなったら大成功なのですが、果たして。
「魔王さん、こぶとりじいさんについて思うことがあるのですが」
「小太りじいさんですか。たいして考えることなどないと思いますけれど」
「いやいや、例のごとく正直者と意地悪な者が出てくるでしょう」
「単純に性格によるものだと思いますよ?」
「こぶとりに重点が置かれていることを考えると、やはりマイナス点なのでしょうか」
「そりゃあ、好きで成ったのでなければ、マイナスでしょうねぇ」
「私、あまり知識がないのですが、中身って脂肪なんですかね?」
「めっちゃ脂肪ですよ。見た通りです」
「だからあんな簡単に取れちゃうんですね」
「えっ、人間の脂肪って簡単に取れましたっけ?」
「鬼が取っていました」
「ああ、魔法を使ったのかな」
「そもそも、なぜこぶとりなのでしょうか」
「それはもう純粋に脂肪を溜めたからですよ。暴飲暴食をしたとか」
「食べ物がたくさんあるようには思えませんでしたけど」
「食べ物の量だけでなく、何を食べるかによっても肥満は発生しますよ」
「炭水化物ばかり食べるとか?」
「まさしく」
「片方だけ肥えるなんてことがあるのですね。おもしろいです」
「肥える時はまんべんなく大きくなると思いますよ?」
「たしかに、最後は両方のほっぺが大きくなってしまいましたね」
「ほっぺどころじゃないですよ」
「え、いつか全身に広がるんですか」
「最初からですよ」
「体中アレだらけなんて嫌です」
「そうならないために、日頃から適度な運動やバランスのとれた食事が必要なのです」
「ぐーたらのんびりはだめですか?」
「勇者さんはエネルギーが足りないことの方が多いので食べてください」
「ほっぺが大きくなり始めたら教えてくださいね」
「ぷっくりほっぺでかわいいと思いますけど」
「顔を洗うのが大変になっちゃうじゃないですか」
「少しぷっくりしたくらいで、そこまで変わりませんよ」
「いざとなったら、魔王さんがこぶ取ってくれるのですか?」
「えぇっ、見たいですか? ぼくの小太り」
「見たいというか、やってほしいと言っているのです」
「変化魔法でなるにしても、なんで小太りなんかに……。いやですよう」
「私を助けると思って」
「そんなことで助かるんですか?」
「人命救助ですよ」
「うそだぁ」
「絶対に日々の生活に悪影響だと思うんです」
「それはそうでしょう。脂肪の塊なんて抱えているべきではありません」
「鬼になってぽろっと取っちゃってください」
「勇者さんに対して鬼になんてなれませんよう」
「じゃあ、どうやってこぶとるんですか」
「い、いっぱい食べますから」
「ちょっと変化するだけでいいんですよ」
「一気に小太りは気分が落ち込みますって」
「魔王さんが食べている間に私のぷっくりが悪化したらどうするんですか」
「怒るということですか? かわいいですね」
「アホ毛引きちぎりますよ」
「無慈悲」
「仕方ない。私も宴会に参加して鬼にやってもらおう」
「宴会なんて、さらに肥えるだけですよ」
「踊るんですよ」
「踊って脂肪を落とす作戦ですか」
「あ、なるほど。あれってそういう意味だったんですね」
「どういうことです?」
「鬼の宴会に参加し、我慢できずに踊って気に入られ、こぶを取られる。ははーん、昔のダイエットをこうやって表現したのですね」
「んんんん? 何の話です?」
「昔ばなしですよ。『こぶとりじいさん』というお話を読んだんです」
「こぶとりじいさん……? 小太りじいさんじゃなくて……?」
「それだと、ただの肥えたおじいさんじゃないですか。魔王さんこそ何の話です?」
「あれ……?」
「ん……?」
「……こぶを取るおじいさんと、小太りのおじいさん?」
「…………まさか」
「勇者さん、最初からやり直しましょう。やらせてください、ぼくたちの会話を!」
「鼓舞する魔王さん」
お読みいただきありがとうございました。
瘤取りVS小太り。勝つのはどっちだ。
魔王「ぼくとしたことが、勇者さんとすれ違うなんて!」
勇者「途中まで、全然気がつきませんでした」
魔王「ぼくならできる、ぼくならできる、勇者さんとの会話ができる!」
勇者「そんなに気にしなくていいのに」




