521.会話 ドレッシングの話
本日もこんばんは。
今日はドレッシングの日ということで、第24話に出てきたあのドレッシングが再び――。
「ドレッシングを作りましたので、たくさんかけて食べてくださいね」
「懐かしいですね。おい死くなるドレッシングでしたっけ」
「それ、もう賞味期限が切れていると思うのですが」
「まだいけます」
「だめです。冷蔵庫にも入れてないじゃないですか」
「入れる冷蔵庫なんてどこにあるんですか?」
「ぼくのポシェットの中に」
「あ、だいじょうぶです」
「ぼくが作ったドレッシングは安心安全のものですよ」
「おいしいです。一体何を入れたのですか」
「そんなに睨まなくても、普通の調味料ですよ」
「おのれ料理上手」
「ぼくが考えたオリジナルレシピも多数あります」
「ドレッシングって手作りできるものなんですね」
「魔ックパッドに色々投稿しているので、勇者さんも見てみてくださいね」
「一文字しか違わない」
「勇者さんの健康を考えたドレッシングです。サラダにかけると健康になりますよ」
「健康はちょっと」
「まあ、そう言わずに。たんとお食べ」
「私も魔王さん専用のドレッシングを作ろうかな」
「先代の犠牲を思い出してください」
「おいしかったでしょう?」
「舌が痺れた記憶しかありません」
「びりりっとくるくらい、おいしかったのですね。ふふん、そうでしょう」
「どこからその自信が出てくるのでしょう」
「目をぐるぐる回して喜んでいましたもんね」
「感覚を破壊されましたよ。勇者さんが楽しそうなのでなんでもいいですけど」
「おい死くなるドレッシングも真っ青の新・ドレッシングを作りたいです」
「料理に対してやる気を出してほしいのですが」
「毒だらけドレッシングを作り、魔ックパッドに投稿します」
「魔族には大好評になりそうです」
「まず、テトロドトキシンを用意します」
「難易度が」
「そこにトリカブトで有名なアコニチンをこんにちは」
「危険極まりないですね」
「最後に、ペロッと舐めて確認しよう、青酸カリをそーれそーれ」
「舐めちゃだめですよ」
「できました。テキトーに危険物質を混ぜた毒ッシング」
「名前の攻撃力が上がりましたね」
「おいしさにどきどきハラハラしてくださいね」
「中毒症状の間違いではなくて?」
「魔王さんなら、うれしさのあまり涙を流すでしょう」
「体が悲鳴をあげている証拠かと」
「ぜひ食べて欲しいのですが、まず毒がありません」
「そんな危ないもの、集めていたら無言でぼくが廃棄しますよ」
「せめて一言いってから捨ててくださいね」
「ですが、捨てますと言って許してくれますか?」
「いいですよ」
「いいんだ」
「魔族に毒が効いた経験がないんですよね」
「大抵のものは意味がないでしょう。相手は毒そのものみたいな感じですから」
「では、なんで魔王さんは舌が痺れたり目を回したりするのでしょうか」
「人間に合わせているので、毒の効果が出ているように見えるのですよ」
「見えているだけなら、ダメージはないのですか」
「ありますよ。うわ、苦しいかもって思ってます」
「そこは魔王ぱぅわぁーでダメージゼロにしてくださいよ」
「勇者さんと同じ世界を見ていたいのです」
「そこまで体を張らなくても」
「人間、自然、それらを内包するこの世界……。そう、びっぐらぶ」
「魔なるものは?」
「毒に沈めたい」
「神様は?」
「ありとあらゆる苦痛を味わえばいいです」
「毒ッシング、いりますか?」
「頂戴します。ですが、神様にはあげません」
「おや、そうなんですか」
「勇者さんが作ったものはすべてぼくのものです。誰にもあげませんから!」
「過激派だ」
「奪われないよう、飲み干しちゃいますね。ごくごくごくごくげっほげほごほがはっ」
「生きるのが大変そう」
お読みいただきありがとうございました。
進化した毒のドレッシング。
魔王「げほごほがはあえわえああえああえあ」
勇者「だいじょうぶですか?」
魔王「とでっ……もおいじいでずおえぅよ」
勇者「嘘であることはわかりました」




