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515.会話 空き巣の話

本日もこんばんは。

今日は防犯の日ということで、安心安全の空き巣SSです。

「魔王さん、何やらガチャガチャと音がするのですが」

「奇遇ですね。ぼくもはっきり聞こえますよ」

「私の想像ですが、この音は鍵を開けようとする音ではありませんか?」

「奇遇ですね。ぼくもそう思っていましたよ」

「そうなると、泥棒ということになりますね」

「そうなりますね。大方、空き巣がカーテンの閉まっている部屋を狙ったのでしょう」

「カーテンが閉まっているから留守とは、ずいぶん短絡的な思考です」

「ぼくたち、映画観賞中なだけですもんね」

「暗い方が、雰囲気が出るんです。特に、ホラー映画は」

「ドキドキが増しますね」

「せっかく楽しんでいたのに、ガチャガチャ音が気になって集中できません」

「空き巣の可能性を気にしてほしいのですが」

「留守じゃないのでご遠慮いただきたく」

「向こうはそれどころじゃないと思いますよ」

「留守だと思って入ってきて、誰かいたらどうするんですか?」

「逃走するか、中にいた人に危害を加えるか、でしょうか」

「勝手に入ってきて、いい度胸ですね」

「対策としては、セキュリティ万全の鍵に変えるとか、在宅アピールをするとか」

「大きな紙に『私たちはここにいます』と書きましょうか」

「いついるかがわかった方がいいのではないでしょうか」

「お店のオープンクローズ看板みたいに表裏方式で」

「いない時は『私たちは外出中です』と書くのですか」

「泥棒してくださいと言っているようなものですね」

「ほんとですね。やっぱりやめましょう」

「電気つけっぱなしは良くないですし、そうなると道はひとつです。南京錠百個」

「自分たちが入るのも大変になりませんか?」

「防犯と労力、どちらが大切ですか」

「きみはどちらだと思いますか?」

「労力ですね。めんどくさいことはやりたくない」

「でしょうね。勇者さんに防犯意識とかなさそうですし」

「すごく失礼なことを言われている」

「だって勇者さん、部屋の鍵とか閉めないじゃないですか」

「鍵という概念にまだ慣れなくて。それに、箱庭にいた時は鍵といえば――」

「はい、ストップ。それ以上はぼくにダメージが入ります」

「まだ何も言っていませんけど」

「もう既に心臓がぎしぎしいっています」

「扉はガンガンいっていますけどね。もしかして、ぶっ壊そうとしてる?」

「犯行が荒い空き巣のようですねぇ」

「ここ、宿なんですけど」

「お店の人に空き巣が出るみたいなので注意してくださいと言っておきましょう」

「弁償って私たちがやるんでしょうか」

「さすがにお店側が持つと思いますよ。もし請求されてもぼくがいますから」

「魔王ぱぅわぁーで黙らせるんですか」

「いえ、お金で黙らせます」

「これだから富豪は」

「宿すべての修繕も余裕です」

「それ以上、富豪自慢をするなら黙らせますよ」

「ゆ、勇者さんったら大胆なことを……!」

「首を落とす」

「ホラー映画も真っ青ですよ」

「魔王さん、扉が斧で割られているようです。隙間が見え始めました」

「そろそろ、ひとがいることに気がついてもよさそうなのですが」

「お間抜けなんじゃないですか?」

「ぼく、勇者さんが『お間抜け』って言うの、結構好きなんです」

「では、言い方を変えましょう」

「なんて言うのです?」

「ばか」

「身も蓋もない。ですが、ぼくも勇者さんに言われたいです~」

「あほなこと言っていないで、さすがに対応しないとまずいですよ」

「あほって言われた」

「催涙スプレーとかあります?」

「んもう、危険なことばかり言うんですから。どうぞ」

「あるんだ」

「ですが、勇者さんは危ないので下がっていてください。ぼくがやります」

「なんで拳を握ったんですか? 催涙スプレーは?」

「こっちの方が倒した気分になれますから」

「……なんか、怒ってます?」

「勇者さんとののんびりタイムを邪魔されましたからね」

「笑顔がこわい」

「にっっっっっっっっっっこり」

お読みいただきありがとうございました。

犯人は無事、グーパンで倒されました。


勇者「物騒な世界ですね」

魔王「きみはなんでそんなにのんびりしているのですか」

勇者「魔王さんがいるからいいかなって」

魔王「そうですけど、そうですけどね、そうじゃなくて」

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