511.会話 制服の話
本日もこんばんは。
今日の魔王さんも相変わらず欲望の権化。
「妙に気味の悪い顔で妄想にふけっているようですが、顔面がうるさいですよ」
「いやぁ、勇者さんの制服姿に強い憧れがありまして。顔面は清楚ですよ」
「私の征服姿?」
「ナチュラルに蹂躙するじゃないですか」
「制服というと、たまに見る、学校に通う人たちが着ている服のことですか」
「はい。一定の集団に属するひとが着る服を制服と呼びます」
「その定義だと、聖女の正装も制服なのですか」
「そうですよ。ぼくはいつも制服を着ていることになりますね」
「へえ」
「興味なさそう」
「そういえば、勇者の制服ってありませんよね。イメージするものはありますけど」
「これというものはないですね。強いて言えば、マントや剣でしょうか?」
「でも、決められた服があると便利かもしれません」
「制服に興味が出ました?」
「考える労力がめんどくさい」
「怠惰勇者さん」
「聖女が白なら、勇者は黒でいいや」
「同じ聖性なんですから、そこは白でいいのですよ」
「もっと自然に溶け込む服がいいです。迷彩柄はどうでしょうか」
「迷彩柄のローブを着る勇者ですか」
「新しい勇者だと思います。これまでにいましたか?」
「割といました」
「割といたんだ」
「やはり、姿を隠せるというのは利点ですからね」
「ハッ、ひらめきました」
「また悪知恵ですか」
「魔王さん、木を隠すには森の中ですよ」
「というと?」
「魔族っぽい見た目をして魔族の中にいれば、魔族だと思われてセーフ」
「ヒント、勇者の力」
「おのれ勇者」
「もうひとつヒント、これまでの勇者さん」
「おのれ私」
「人間の中でも魔族の中でも隠れられていたことがありますか?」
「ないですね」
「そういうわけで、聖女の中に紛れ込みましょう」
「どう足掻いても無理」
「聖性はクリアなので、あとは白い服を着れば誤魔化せます」
「誤魔化すって言った?」
「いいこと思いつきました。勇者の制服も聖女と同じものにしましょう」
「男性の勇者に慈悲はないのですか」
「聖職者なら男性もいますよ」
「まあ、そういうことなら」
「ひらひらは着せますけど」
「やはり魔王か」
「女の子の勇者は特にひらひらふりふりきらきらさせましょうね!」
「なんで楽しそうなの」
「勇者さんにかわいい服を着せるチャンスです」
「欲望の権化」
「ふっふっふ、制服なら着るしかないでしょう?」
「今日から魔王さんのことをブラック校則と呼びます」
「そんな」
「生徒たちよ、反旗を翻す時が来た」
「ぼくも一緒に戦います!」
「魔王が何か言っている」
「かわいい制服の導入を求めます!」
「生徒代表みたいな勢い」
「勇者さんの制服姿見たいです!」
「そろそろお黙りください」
「学校制服の良さを知らないからですよ。想像してみてください。勇者さんのブレザー制服姿。勇者さんのセーラー服姿。マリンセーラー服なんてものも――」
「はいはい、よかったですね」
「助かる命があるんですよ?」
「知りませんよ」
「ちなみに、ノスタルジア魔法学院の制服はこんな感じ――」
「通うつもりはないので結構です」
「かわいいのに」
「ほっといてください」
「かわいいのに!」
「欲望の塊すぎる」
お読みいただきありがとうございました。
ノスタルジア魔法学院の制服はいつか出ると思います。たぶんおそらくめいびー。
勇者「みんな同じ服というのもね」
魔王「そんな勇者さんに、特注制服をプレゼントしたい――」
勇者「Tシャツ勇者」
魔王「ちょっと話し合いましょうか」




