501.会話 道祖神の話
本日もこんばんは。
道祖神がいるファンタジーワールドもいいと思うのです。
「先ほどからよく見かける石は何なのでしょうか」
「道祖神ですよ。神様です」
「なんだと」
「ぼくたちの知っている神様の何億倍もすばらしい神様です」
「拝んでおこう」
「その役目は多岐にわたるとされています。疫病や悪霊を防いだり、村の守り神だったり子孫繫栄だったり、旅や交通の安全を守る力もあるそうですよ」
「とんでもない神様ですね。あれと交代した方がいいんじゃないですか」
「ぼくもそう思います」
「かなり強めに拝んでおこう」
「旅人であるぼくたちには重要なことですね」
「中心や境界にあるということは、教会と似た役割もあるのでしょうか」
「はい。厄災の侵入を防ぐこともしてくれます」
「道祖神を世界の隅々に設置したら、勇者不要じゃないですか」
「勇者は必要ですよ」
「一メートル間隔で道祖神」
「ちょっと多いかな」
「三十メートル」
「うーん……」
「一キロ」
「許可します」
「できあがる道祖神ワールド。あ、そうだ。人間を道祖神にすればいいんですよ」
「人柱みたいなこと言わないでください」
「みたいじゃありません。人柱です」
「やだぁ……」
「やる気のない聖女を捕まえて柱に括り付け、道の途中にさしておきましょう」
「魔女狩り?」
「数百年後に石になります」
「なりません。死にます」
「これが道祖神の始まりと言われています」
「言われていません。また捏造しましたね」
「魔王さん、おまんじゅうがお供えされていますよ」
「道行く人がご利益や感謝の意味で供えているのでしょう」
「勇者より勇者みたいなことしている神様にお礼をしなければ」
「勇者さんが勇者みたいなことすれば解決なのですが」
「それはちょっと難しいのでお菓子を献上します」
「難しくないですよ」
「まず、かりんとう。次におまんじゅう。そして金平糖。最後におせんべい」
「古き良き」
「まだ足りない気がします」
「勇者さんが勇者業を放置し過ぎているからだと思いますよ」
「最後の手段を使うしかないようですね」
「最後の手段?」
「お金」
「しまいなさい」
「だって、あと渡せるものは私の命くらいですよ。でもいらないでしょう、命」
「道祖神も困っちゃうのでやめてあげてくださいね。必要です、命」
「私の命なんてもらってもうれしくないでしょうから、お金で」
「正論を言えば、食べ物を供えても道祖神は食べられません。こういうのは気持ちが大事なのです。いいですか、気持ちですよ」
「強調された」
「まじ感謝。超感謝。ほんと助かってますオールウェイズ。さあ、唱えてください」
「気持ちが感じられない」
「真面目な顔で言っておけば大体だいじょうぶです」
「大事な気持ちが感じられないって言ってんですよ」
「一体何が問題なのでしょうか」
「どう考えても言葉のチョイス」
「ぼくとしたことが、己の気持ちがうまく伝えられないようです。仕方ありません。ここは行動で表すとしましょう。よいしょっと」
「とんでもない量の金貨に道祖神も困惑しているでしょう」
「きらきらしてきれいですね」
「優しげな笑顔が戸惑っているように見えてきました」
「丁寧に積んでおきましょう」
「次に、この道を通るひとが持って行ってしまうのではないでしょうか?」
「罰当たりなひとは神様が見ていますから」
「でも、この金貨の枚数は罠ですよ。欲がなくても揺らぐ量です」
「では、書き置きを残していきましょうか」
「なんて書くんですか?」
「『おひとりさま金貨一枚まで』」
「怪しいなぁ」
お読みいただきありがとうございました。
相変わらず世界観が迷子。
勇者「役目を終えた勇者が道祖神になるというのは?」
魔王「エッ……、えええと、そういうのもいいかもしれなくもないですね」
勇者「磔はいやだなぁ」
魔王「そこから離れてくださいね」