496.会話 メロンパンの話
本日もこんばんは。
また食べ物の話をしている。
「メロンパンのメロンについて議論したいのですが」
「ついに来ましたね。『メロンパンという名前のくせにメロンが入っていない』という全人類が直面する話題に。さあ、熱く語り合おうじゃないですか、勇者さん!」
「メロンってなんですか?」
「そこからか」
「何かの名前なんですよね。形でしょうか」
「メロンとは果物の名前です。丸い形をし、複雑な模様が特徴なんですよ」
「それを使っているパンということですね」
「やっときましたね。それが、使っていないのですよ!」
「なんでうれしそうなんですか?」
「勇者さんが話さないわけない話題だと常々思っていましたゆえ」
「別にどうでもいいですけど」
「いつもみたいにくだらないこと言ってくださいよ」
「メロンパンおいしい」
「たんとお食べ」
「メロンパンと言いつつメロンを使っていないのは景品表示法に違反していませんか?」
「景品表示法」
「メロンパン詐欺ではありませんか?」
「メロンパン詐欺」
「勇者として許してはならない事件だと思うのです」
「事件ですか」
「勇者として解決策を提示します」
「それは?」
「メロンを入れる」
「ですよね。ですが、メロンは少し高級な果物でして、パンに入れるには……」
「だいじょうぶです。勇者として、そんなことは問題ではありません」
「『勇者として』って枕詞なんですか?」
「便利なので使っていこうと思います」
「便利って言っちゃった」
「入れられない理由が高級だからというのは好都合です」
「なぜですか?」
「ここに財布がありまして」
「ご紹介にあずかりました、魔王です」
「よくわからんひらひらした服のこことかそことかどここことかに金貨があります」
「勇者さんったら大胆ですねぇ!」
「この金貨があればメロンのひとつやふたつ……買えますか?」
「何十個でも買えますよ」
「ということで、メロンパンもにっこりですね」
「勇者さんはにっこりしないんですか?」
「だってメロンが何か知りませんし」
「そんな勇者さんに本日はこちらにメロンが……‼ ないです。ごめんなさい」
「空虚」
「山の中すぎて店すらありませんでした」
「パンは売っていたのですね」
「秘境のパン屋さんは人気があるのですよ」
「卑怯?」
「誠心誠意、堅実で健全なパン屋さんです」
「人様に迷惑かけてまで作るものではないと思いますよ」
「人様に笑顔とおいしさを届けるパンですのでご安心ください」
「メロンは入っていないのに」
「そもそも、メロンを入れて作るものではありませんからね」
「ややこしいネーミングですよ。魔王さんみたいですね」
「それを言うなら勇者さんもです」
「つまり、メロンパンにも真の顔があるということですか」
「パンはパンです」
「その流れは、食べられないパンは何?」
「フライパンではありませんよ」
「えっ、違うんですか」
「勇者さんはフライパンすら食べそうなので」
「さすがに食べませんよ。歯が負けますからね」
「歯が勝ったら食べるんですか?」
「可能性はありますね」
「ないです。捨ててください」
「人間を信じてください」
「似合わないセリフですね」
「人間なんて信用ならない」
「勇者さんっぽい」
「信じられるのは食べ物とかお金とかミソラとかあれとかこれとかです」
「メロンパンは?」
「違反パンなので信じられない」
お読みいただきありがとうございました。
先に謝罪しておきますが、次回も食べ物の話です。すみません。
魔王「これがメロンパンです」
勇者「おいしいです」
魔王「信じられますか?」
勇者「うーん、だめ」