494.会話 夏バテの話
本日もこんばんは。
躊躇いなくエアコンを使いましょう。
「暑くて人間を続けることができないかもしれません」
「夏バテには早いような」
「なに言ってんですか。私が暑いと思ったら暑いのです」
「感じ方は人それぞれですからね。勇者さん、木陰に移動しましょう」
「人間はどうして夏バテになるのでしょう。それは人間だからです」
「いいから早く木陰に来てください」
「やっぱり太陽を破壊するしかないのかなぁ」
「早くおいで」
「ロケットランチャーを発射したいなぁ」
「無理やり移動させますよ」
「木陰を?」
「勇者さんを」
「半世紀をかけた計画を今ここで……⁉」
「数秒で考えた行動ですよ。触れていいですか?」
「自分で移動します」
「不満そうなお顔で不満そうな動き方で不満そうに座った」
「すずしい……」
「強い日差しの日はあまり直射日光に当たらないよう心掛けてくださいね」
「理由を訊いてあげないこともありませんよ」
「言うまでもなく、体調を崩すからです」
「弱っちい人間だなぁ」
「きみのことですよ」
「私かぁ」
「はやめにお宿に行き、涼むとしましょうか」
「私としては、このまま四時間ほどのんびりしたいのですが」
「その間に陽が傾き、勇者さんを焼きますよ」
「こんがり焼けました~」
「隣に猫がいそう」
「魔王さんは夏バテしないんですか?」
「しようと思ってするものではないと思いますよ」
「人間に合わせているのなら、魔王さんも夏バテ経験積めますよ」
「なにそれ積みたくない」
「だいじょうぶです。私は経験豊富ですから、アドバイスできますよ」
「あんまり訊きたくないですが……、一応」
「気合と根性です」
「勇者さんの辞書にない言葉じゃないですか」
「たぶんなんとかなる」
「辞書にありそう」
「そうやって人間は生きてきたのですよ」
「ぎりぎりを攻めすぎている」
「命とは長い綱渡りのようなものです」
「大の字で寝転がりながら言われましても」
「もうへにゃんへにゃんのふにょふにょです」
「独特な夏バテ表現ですね」
「魔王さんも一緒に人間辞めませんか?」
「ぼくは最初から人間じゃないですよ」
「そうだった。まったくややこしい見た目をしているものです」
「聖女たるもの、常に穏やかで慎ましくいなくてはなりません」
「聖女ではないですよ」
「魔王でした」
「忘れないでください。重要なことです。タイトルが変わってしまいます」
「聖女っぽい魔王に変更しましょうか」
「語呂がなぁ」
「そんなに悪いですか?」
「いや、なんにも」
「ぼけーっとしていますねぇ。お昼寝ですか?」
「この世の正義と悪について考えていました」
「深い」
「やっぱり滅ぼす方がいいのですよ」
「結論が暴論」
「こうして穏やかな日々を過ごしているからこそ導き出される結論です」
「不穏な日々でないと出ないと思いますよ」
「シリアスをお望みか?」
「まさか。ぼくを誰だと思っているのですか。平和と平穏と愛を重んじる魔王ですよ」
「魔王なんだけどなぁ」
「ぼくをなめてもらっては困ります」
「夏バテ魔王さんなら破壊衝動に駆られる可能性も?」
「そんなことになる前に、ぼくは氷の中にダイブしますよ」
「あ、いいなぁ。私もそれやりたい」
「死んじゃうからだめ」
お読みいただきありがとうございました。
魔王さんは容赦なくエアコンを使う派です。
勇者「そもそも夏が暑いのがいけないのだと思います」
魔王「そればかりはどうしようもないですねぇ」
勇者「太陽破壊」
魔王「死ぬほど寒くなりますよ」