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492.会話 世間話の話

本日もこんばんは。

世間慣れしすぎている魔王と世間慣れできなさすぎる勇者によるSSをどうぞ。

「勇者さん、世間話をしませんか?」

「今時の世間というものは、まったくもう……」

「そういうのではなく」

「世間を知りません」

「それもそうでした」

「そろそろ世界は滅んだでしょうか」

「きみが生きているということは、つまり」

「まだのようですね。残念です」

「世界滅亡を望む勇者がいるなど、世間に知られては困りますよ」

「人間大好き魔王の存在も世間にとっては大ニュースだと思いますが」

「ぼくはずっとそのスタンスで生きているんですけどねぇ」

「とても真実だとは思えなくて広まらないのでしょうね」

「ぼく、たまに主婦の方々に混じり、世間話をしているのですが」

「そういうことするから『ぽく』ないと言われるのです」

「人間たちから言われたことはありませんけれど」

「私は」

「言葉足らずでした。勇者さん以外の人間です」

「驚きました。私はいつの間に人間を辞めたのかと思って」

「やる気のなさはピカイチですけど」

「いやぁ、それほどでも」

「勇者さんにとっては褒め言葉なんですか?」

「いや、そうでも」

「ですよね」

「ある」

「その表現を肯定で使うなら事前にそう言ってください」

「なぜですか?」

「ぼくがびっくりする」

「衝撃で心臓が止まってくれたらうれしいのですが」

「ぼくは心臓が止まったところで死にませんよ」

「そういう話をしているのではありません。止まってくれたらうれしいな、です」

「止まってくれたらうれしいな」

「流れ、移ろう世間で生きる私たちです。たまには止まりたいのですよ」

「勇者さんは割と停滞しているというか」

「だって、心臓は動かさないといけないじゃないですか」

「不満そうに言わないでください。止まったら困ります」

「ご婦人たちの世間話でもありませんか? 旦那さんの心臓を止めたいって話」

「物騒ですね。たまにありますよ」

「あるんだ」

「穏やかに微笑みながら計画を話し合うご婦人たちは楽しそうでしたよ」

「平日午後三時の殺人計画」

「昼ドラかな」

「勇者たるもの、人間の願いを叶えるべきですよね。ふふん、腕がなりますよ」

「勇者たるもの、参加しちゃだめですよ」

「先陣を切るべきだと思いませんか?」

「先陣を切って止めるべきだと思います」

「いいですか、魔王さん。人間の世間話の中には渦巻く不満や願い、祈りがあるのです」

「魔なるものたちの被害を嘆き、平和を望む声はよく聞きますけど」

「ハッ! 殺人がだめなら、魔物に喰わせれば……?」

「お顔に『完全犯罪』と書いてありますが、だめなものはだめですよ」

「ウィンウィンだと思ったのですが」

「仮にそうだとしても、勇者さんが言っているという事実がだめなのです」

「さっきから『だめだめだめだめ』と、何なら許してくれるのですか?」

「世間話の裏には勇者が解決すべき問題の情報が多くあります。それを収集し、世界に平和をもたらすならば、ぼくは喜んで賛成しますよ」

「いやですけど」

「当然のように断った」

「だって、人間と会話しろってことですよね?」

「驚愕の真実みたいに言わないでください」

「私がそんなことを、まさか、ほんとうに、実際に、本気でやるとでも?」

「そこまで言いますか」

「絶対にいやです」

「明確な拒絶」

「人間と会話することが好きな魔王さんがやればいいじゃないですか」

「ぼくは好きでやりますが、勇者さんはお仕事ですよ」

「仕事いやだ」

「お話するだけですので」

「まだ魔物退治の方がマシです」

「そんなに世間話がいやですか?」

「人間きらい人間きらい人間きらい人間きらい……」

「誰がどう見ても勇者じゃないんですよね」

お読みいただきありがとうございました。

神様は昼ドラ好きそう。


魔王「買い出しに行った時は世間話に花が咲きますよ」

勇者「おしゃべりがお好きですね」

魔王「おいしそうな献立を教えてもらいます」

勇者「主婦だなぁ」

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