490.会話 教会の話
本日もこんばんは。
聖職者とか教会とかいっていますが、ふんわりですので気にしないでください。
「大きな町ですねぇ。こういうところには……、やはり教会がありますね」
「なるべく避けて遠ざかって視界の隅の端の上の下の横くらいに入れて歩きましょう」
「相変わらず教会がお嫌い――あ、はい、表情だけでじゅうぶん伝わりました」
「教会があるなら勇者の仕事もしなくてよし」
「よし、ではありませんけども。比較的平和に暮らせるのは確かですね」
「一家に一教会にすれば解決では?」
「範囲が激狭」
「とはいえ、聖職者とか教会とかイマイチよくわからないんですよね」
「では、何を知っているのですか?」
「私が教会嫌いだということ」
「自己理解」
「聖女がいるのは知っていますよ。だから行きたくないんですけど」
「頑なに拒否しますもんね。仕方ありません。教会に行かずとも教会の知識を増やすべく、本日もやってきましょう。第八回『教えて! 勇者さん』のお時間です」
「うわ、末広がり」
「教会とは聖職者によって運営される聖域を持つ建物のことです。必ず一人以上の聖女が配置され、教会周辺の町や村を守っています。人々や居住区域を魔なるものから保護するだけでなく、ケガをした人の治療や復旧などに携わっていますよ」
「仕事が多い」
「また、聖職者のトップとして考えられている勇者のサポートも行います」
「行わなくていい」
「旅に必要な備品や情報の提供、食事や寝床の用意から休息時間の確保まで様々です」
「働き者ですね」
「困った時は教会に行く。この世界では一般的な教えです」
「死にかけても教会には行きません」
「強情な勇者さんですねぇ。とはいえ、ぼくも教会には行きたくありません」
「聖職者には魔族だってバレるんでしたっけ」
「こんなに聖女な見た目なのに、ぐすん」
「向こうからすれば、聖女の姿を騙った魔族に見えるのでしょうね」
「魔王ですが、人間には友好的なんですよ、魔王ですが」
「詐欺師の俳句みたいな」
「逆に言えば、どんなに魔族っぽい見た目をしていても勇者だとわかるのが聖職者です」
「………………らしいですね」
「苦虫を三百匹くらい口の中に入れたようなお顔ですね」
「モザイクが必要になる表現は全年齢の敵ですよ」
「すみません、ぼくの魔王が出てきてしまったようですね」
「しまってください」
「いそいそ」
「うわ、なんですか眩しいですよ」
「すみません、魔王をしまったら光魔法が出てきました」
「結界魔法だ。これもしまってください。聖女に間違われます」
「いそいそ」
「ここでは聖女が人間を守ってくれます。仕事をサボれますね」
「ぼくも守っちゃおうかな~」
「なるべく潜んでください。魔族だとバレたら厄介ですよ」
「これだから聖女は……」
「お、魔王っぽいセリフですね」
「ぼくを魔族だと理解しながら聖女すぎる見た目に困惑する彼女たちも好きですよっ」
「やべえやつだ」
「危険な魔族でないことを示すために、魔物を退治してみたりするのですが」
「信じてもらえないでしょうね」
「聖女として当然です。正しい判断ゆえ、ぼくは拍手を送りますよ」
「悪役感はあるんですよね」
「その後は泣きながら帰ります」
「魔王さんっぽい」
「教会にあるステンドグラスが見たい時はこっそりと奥から眺めるんですけど」
「変質者っぽい」
「大聖女を模したステンドグラスは中からしか見られないので悲しいです」
「ふうん」
「興味なさそう」
「教会に行きたくないので」
「教会周辺は聖職者による保護下、教会は聖域ですよ。勇者さんにはぴったりです」
「聖域では勇者はパワーアップするとか?」
「いえ、特には」
「なんだかなぁ」
「温かい食事とふかふかのお布団はあるかもしれません」
「よおし、今日の宿は教会にしましょう」
「ぼくは入れないのですが」
「魔王さんは野宿」
「どうかお慈悲を」
お読みいただきありがとうございました。
ふんわり設定のふんわり作品。
勇者「仕方ありません。屋根だけつけてあげましょう」
魔王「さすが勇者さん。慈悲深きおかた」
勇者「はっぱのおやね」
魔王「ちっさ」