489.会話 Tシャツの話
本日もこんばんは。
今日の魔王さんはいつもより変態度が高いです。
「勇者さん、そのお姿は一体……!」
「何を驚いているのですか。服は着ていますよ」
「華奢で可憐なお体をどう見てもサイズの違うぶかぶかTシャツ一枚ですって⁉」
「他に着る服がなくて、その辺にあったものを拝借しました」
「いやぁ、勇者さんの服を洗濯し、宿が用意した服を隠し、事前に買っておいたTシャツを置いておきましたが、こんなにうまくいくなんて……!」
「犯人はお前か」
「やだ、名探偵勇者さん」
「動機はなんですか。たぶん、くだらないことだと思いますけど」
「ぶかぶかサイズの服をだぼっと着る女の子ってかわいいと思いませんか?」
「やっぱりくだらなかった」
「さいこ~! めちゃくちゃかわいい~! でもかわいすぎて危険。どうしよう」
「情緒が不安定」
「その恰好で外に出ないでくださいね?」
「もう夜なので出ませんよ」
「誘拐されちゃうから‼」
「夜なので静かにしてください」
「それにしても勇者さんチラッ、ぼくが思った通りめちゃかわチラッ、罪深いチラッ」
「ラクでいいです」
「めくっちゃだめです‼」
「やかましい。ちゃんと下は履いていますよ」
「そういう問題ではないのです。見えないという事実が重大なのです」
「元気なひとだなぁ」
「なんだろう、この罪を犯している感は、なんでしょう勇者さん……!」
「知りません」
「ぼく、魔王なのに、なんでこんな気持ちを抱いているのでしょう勇者さん……!」
「知りませんって」
「うまく息ができません……! ぼく、死んじゃうのでしょうか……?」
「勝手にどうぞ」
「ちなみに、着心地は保証しますよ。ぼくが温めておきましたので」
「秀吉?」
「お風呂上りにTシャツ一枚なんて、風邪をひいてしまうかもしれませんからね」
「そう思うなら、もっと厚手のものを用意しておけばいいのでは」
「すみません、欲に素直になった結果です」
「今回は着やすいので許します」
「大感謝」
「うさぎさんのプリントもかわいいですし」
「その辺にいたうさぎさんに出演していただきました」
「ミソラと一緒に寝ようっと」
「ですから、そのお姿でベッドにダイブしないでください!」
「なにゆえ?」
「見えちゃうでしょう!」
「だから、履いています」
「めくれています! お腹のチラリズムですよ!」
「もう寝る時間なのに、元気ですね」
「勇者さんったら大胆~~~~!」
「隣の部屋から苦情がくるかもしれない。うるさいって」
「ぼくはとてもイケナイことをしているのではないでしょうか……!」
「カタカナにするな」
「ハッ、Tシャツ勇者さんの写真を撮らなくては!」
「そういえば、Tシャツを着たのは初めてかもしれません」
「勇者さんってば、服一枚で世界を救える力を持っているなんて……」
「救われていないから魔王さんが生きているんですよ」
「無防備に素足をさらすなんて、一体どういうことですか⁉」
「Tシャツ一枚しかないからですね」
「うぎゃあ~~~~~かわいい~~~~んも~~~~~あああああ~~~」
「寝るので静かにして。うるさいと魔王さんだけ外に放り投げますよ」
「勇者さんったら~」
「身ぐるみ剥いで」
「そんな」
「震えて眠れ」
「寒さに?」
「いえ、ムカデに」
「ひぃ」
「噛まれ放題ですね」
「そんなのいやですよう」
「それじゃ、静かにしてくださいね」
「わかりました。その前に一枚」
「よろしい。いけ、ムカデ」
「えっ、まさか部屋の中に――」
お読みいただきありがとうございました。
いつも通りかもしれません。
勇者「パジャマにぴったりですが、ラクなので外でもこれがいいです」
魔王「絶対だめです」
勇者「誰も見ませんし、見てもいいことな――」
魔王「絶っっっっっっっ対だめ!」