485.会話 願いごとの話
本日もこんばんは。
七夕ですので、それっぽいSSです。
「勇者さん、短冊を用意したので願いごとを書きましょう!」
「楽しそうですね」
「るんるんるんるんるんるんるんるん~!」
「楽しそうですね?」
「だって一年に一度の行事ですからね。楽しまなくては損ですよっ」
「毎日がエブリデイのくせに」
「毎日がオンリーワンデイなのですよ」
「願いごとを紙に書くんでしたっけ。前にもやりましたね」
「国独自の文化はたくさんありますからね。こちらも似たようなものですが、星に掲げるのではなく笹に括り付けます。これです。わっさわっさ」
「笹ですか。おいしそう」
「パンダ勇者さん」
「願いごとね……。私はいいです」
「ぼくは勇者さんのあるてぃめっとはっぴーをお願いしようかと思います」
「ご自分のための願いごとを書いてください」
「ぼくもはっぴーになるための願いごとなので、これでいいのですよ」
「やれやれ……。魔王さんは人間の文化がお好きですよね」
「楽しいので」
「全世界の楽しいイベントを網羅する旅に出るとか言い出しそうですね」
「お望みならば」
「お望んでいません」
「願いごとはなんでもいいのですよ。例えば、人類滅亡とか」
「私に寄り添った例を出さないでください」
「和洋中食べ放題とか」
「風情も何もない」
「超高級最上級至高布団」
「目が疲れる」
「どうぞ、こちらにペンが」
「今の中から選ばないといけないのですか?」
「例えばなので、お好きに書いていいですよ」
「今日の夕飯のメニューでも?」
「それは言っていただければ作りますので」
「この願いごとは誰が叶えてくれるのですか?」
「夕飯のメニューならぼくですね」
「人類滅亡だったら?」
「とりあえず緊急会議をします」
「では、間をとって魔王さんの首」
「存在しない間をとらないでください」
「もらってもうれしくないのでいらないです」
「もっとロマンチックな願いごとにしませんか? 流星群とか」
「命中率が九十パーセントの?」
「そっちじゃない」
「まあ、きれいな星は見たいですけど」
「そういうことを短冊に書けばいいのですよ」
「その願いごとは私が書くものではありませんから」
「では、きみは何を書くのですか?」
「うーん。あんまり思いつかないですが、どうしてもと言うなら、はい」
「見てもいいのですか?」
「どうぞ」
「なになに……、『今夜は晴れますように』ですか」
「天候ならわかりやすいですし、今のところいい天気ですから」
「これなら叶いそうですねぇ」
「晴れたところで私は宿の中にいますけど」
「いつもの勇者さんですね」
「魔王さんは書きましたか?」
「もちろんです。ほら、『勇者さんがあるてぃめっとはっぴーになりますように』」
「まじで書いたんですか」
「とーぜんです。ぼくに二言はありませんよ」
「こればかりは二言があってもいいと思いますが」
「すいぱーはいぱーあるてぃめっとうるとらはっぴーに変えるというのなら」
「い……いいです。ちょっとよくわからないですし」
「ぼくの語彙力に圧倒されてしまったみたいですね」
「そーですね」
「なんでそっぽ向くんですか」
「いい天気なので、今夜はきれいな星空になりそうですね」
「そうですねぇ。それでは、ぼくはおそうめんを茹でてきますね」
「今日の夕飯ですか?」
「そうですよ。他に食べたいものがあれば言ってくださいな」
「笹は?」
「あれは食用ではありません」
お読みいただきありがとうございました。
やっぱりロマンチックにはならない。
魔王「きれいに晴れましたねぇ。星がきれいです」
勇者「天気予報が当たってよかったです」
魔王「勇者さんの願いごとのおかげかもしれませんよ」
勇者「そういうことにしてあげましょう」