484.会話 元ネタの話
本日もこんばんは。
当作品は様々なネタを散りばめているので探すのも楽しいと思います。
「勇者と魔王の元ネタってなんでしょうか」
「かつて存在した魔王と勇者だと思いますけど」
「そのひとたちが今の勇者と魔王のイメージを作ったのでしょうか」
「ううむ、ぼくの知る限りでは、現在広まっているイメージとは違うと思いますよ」
「でしょうね」
「ぼくを見て頷かないでください」
「だって全然違うから」
「あまりに深い頷き」
「ちなみに、私の元ネタはその辺の石ころです」
「嘘はよくありません。きみの元ネタは赤いきらめきのレッドダイヤモンドですよ」
「嘘はよくありません。どちらも嘘ですよ」
「ひどい真実」
「魔王さんの性格の元ネタはなんですか?」
「ぼくはこれまでもこれからもぼくのままですよ」
「勇者愛好家に片足を突っ込んだ瞬間があったはずです」
「そういう意味では、人間を好きになった時が該当すると思いますよ」
「出た、いにしえ」
「あの瞬間、ぼくの世界に色がついたのです」
「ははあ、裏金だな」
「そういう色ではなく」
「わかりました。紅葉ですね」
「たしかに色づきましたけど」
「気分も高揚しちゃったんでしょう。魔王さんったら色めいちゃって」
「よく回る頭ですねぇ」
「疲れた」
「はやい」
「私の前世ってナマケモノですかね?」
「そこまではわかりませんが、ナマケモノの血は入っていそうですね」
「混血……?」
「言葉の綾です」
「魔王さん、私たちの元ネタを作りませんか?」
「元と言っているのに作るのですか」
「長い時間が経てば、どちらが先だったかなんて誰にもわかりませんよ」
「そうは言っても、作るというのはどのような意味ですか」
「ここに暗黒物質がありますね」
「なんですか、この闇」
「小腹が空いたので何か作ろうと思ったのですが、焦げました」
「まずぼくに言ってください。ケガしたら危ないですよ」
「ごめんなさい。では、これを使って私の元ネタを生成します」
「待ってください。これの元ネタ――じゃなくて元はなんですか?」
「細かいことは気にしなくていいんですよ」
「いえあの、何を燃やしたんですか?」
「これを伸ばして、細くして、形を作りますよ」
「材料はなんですか。かつての姿を教えてください」
「決して戻ることがないのです。知っても意味がありませんよ」
「万が一、勇者さんが口に入れたら大変だから言っているのです」
「私は赤子じゃありません」
「食べ物だったらとりあえず口に入れるじゃないですか」
「食べ物なら食べられますから」
「この暗黒物質も食べ物とおっしゃいますか」
「かつてはね」
「今は違うという認識でよろしいですね?」
「がんばればいけます」
「がんばらなくていいです」
「そんなことより見てください。私っぽくなってきましたよ」
「ヒト型というだけです」
「目を凝らせば見えてくるはずです」
「深淵がこちらを見てくるのですが」
「吸い込まれそうな黒髪でしょう。褒めてもいいですよ」
「この平べったいところが髪ですか?」
「これから生まれます」
「生まれます?」
「私の予測では、十五パーセントの確率で私っぽくなります」
「そこそこ低い」
「創造神は大変ですね」
「思ってもないことを」
「魔王さん見てください。虚無です」
「失敗したんですね」
「私の元ネタが消滅したので、私もなかったことになります」
「バックトゥザ勇者さん」
お読みいただきありがとうございました。
教養を感じる言葉遊びを散りばめたいのですが、無理でした。
魔王「ねえ勇者さん、この物体のかつての姿を知りたいのですが」
勇者「知らなくていいことも世の中にはありますよ」
魔王「魔王なのですべてを知りたいのです」
勇者「魔王なんてやめてしまえ」




