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480.会話 アルビノの話

本日もこんばんは。

ちょっとだけシリアス風味かもしれない気がしないでもないような気がします。

「これ、魔王さんが読んでいた本ですね。置きっぱなしでどこかに行くなんて、魔王さんらしくない――いえ、らしいですね。私のことばかり世話を焼いて、自分のことは後回しにするんですから。ええと、忘れない位置はこの辺――あっ……、いけません、何か落ちました。……写真でしょうか? 私じゃないですね。誰だろう、この白い人……」

「ああああああああああああーーーーーー――⁉」

「びっ……くりした……」

「あっ、ごめんなさい大きい声を出して」

「…………びっくりした……」

「ごめんなさいごめんなさい驚きで勇者さんが小さくなっちゃったぁ!」

「……おかえりなさい、魔王さん」

「ただいまです、勇者さん。あのですね、その本なんですけどね」

「ごめんなさい、私が勝手に触って、写真を落として……」

「あああああいいのですいいのです片づけずに出かけたぼくが悪いので!」

「汚れてはいないと思いますので、確認お願いします」

「だいじょうぶですよ。ただの資料ですから」

「資料?」

「勇者さんにも知っていてほしいのでお教えします。それはアルビノについて書かれた本です。主に、彼らが辿ってきた厳しい歴史についての話ですね」

「アルビノ?」

「はい。その中でも、特に赤い瞳を持っていた人間たちのことについて、です」

「赤い目ですか。魔族のようですね」

「彼らは人間でありながら、魔族として恐れられ、迫害されました。当然、ただの人間なので抵抗にも限界があります。その多くは殺意に晒されながら生きてきたのですよ」

「赤い目への恐怖心は人間の生存本能によるものだと神様から聞きました」

「はい。ですから、恐怖心を抱くなというのは難しいのです」

「魔なるものと同じ色を持った存在が人間界から淘汰されるのは必然の理ですよ」

「生きるために必死な彼らを否定するつもりはありません。けれど、赤い目だけで迫害される世界を少しでも変えたいと思うのです。……理想郷ですけどね」

「あなたはずいぶんと赤目の人間に情を持っているのですね」

「色々ありまして」

「この本も私が生まれる遥か昔のものです。いつから赤目の人間を調べていたのですか」

「調べ始めたのは割と最近ですよ。ただ、きっかけは遠い遠い昔の人間です」

「この写真の人ですか?」

「いいえ。写真という技術もなかった、遥か遥か昔のことです」

「あなたがそこまで言うなんて、きっと気が遠くなるような古なのですね」

「い、古……」

「違いますか?」

「正しいですが、謎のダメージが……」

「今更のような」

「……こほん、アルビノは遺伝子疾患によるものです。ただ、それとは別に、赤い目を持って生まれただけの人間もいます。……きみのような」

「……ほんと、迷惑な話ですよね」

「ヒトとして扱われなかったアルビノたち同様、赤目に対する世界の認識は筆舌に尽くしがたいものです。想像を絶すると言ってもよいかもしれません」

「魔王さんがそこまで思うなんて、人間もなかなかやりますね」

「できれば褒められるべき事であってほしかったです」

「無理ですよ。今まで見てきたのでしょう?」

「はい。ずっと見てきました。だからこそ」

「な、なんですか。私を見て」

「勇者さんを通じて世界の認識を変えようと思うのです」

「……はい?」

「魔なるものは停滞の存在。けれど、人間は変わりゆくものたち。魔王であるぼくが変わることが、たとえ意味がないとしても、きみは違います」

「よくわからないのですが……」

「簡単にご説明しましょう。勇者さん、己のかわいさを自覚してください」

「……ん?」

「そして、そのかわいさで世界を変えるのですよっ!」

「……んんん?」

「所詮はただの色です。かわいさの前では無力。そうでしょう?」

「いやそんな、生存本能には勝てませんよ」

「アナスタシアさんとか」

「彼女は少し特殊な環境で生きてきましたし」

「ルーチェさんとか」

「特殊レベルはさらに上です」

「コレットさんとか」

「彼女は知識と理解がありましたから」

「知識と理解は後でもいいのです。まず感情が大切なのですよ」

「つまるところ、いつものやつですか?」

「勇者さんかわいいですねっ」

「やれやれですよ」

お読みいただきありがとうございました。

シリアスを強制的に破壊する魔王さん。


勇者「この本、私も読んでいいですか?」

魔王「えっ――もちろんどうぞ――いやまだ早――ううん――でも知っておいた方が――ええと」

勇者「そんなに悩みますか」

魔王「だめでうぞ」

勇者「どっち?」

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