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48.会話 移動手段の話

本日もこんばんは。

題名の安直さにそろそろ慣れる頃かと思います。

「足が痛い……。疲れた……。眠い……。動きたくない……」

「ああ……勇者さんの怠惰モードが強になってしまいました。休憩しましょうか」

「毎日毎日、歩きっぱなしで大変ですよ。どっかで馬でも攫いませんか」

「窃盗ですよ。あと、乗馬は技術が必要なので初心者には危険です」

「違いますよ。馬車にするんです」

「人も攫う気ですか」

「魔王さんが御者をやるんですよ」

「勇者さんにやっていただくより安全ですね……。いいでしょう」

「いいんかい。冗談ですよ」

「でも、徒歩は時間もかかりますし距離は稼げませんし、天候にも左右されて大変ですよね。屋根がほしいなぁと思いますよ」

「そういう人たちが傘を開発したんでしょうね」

「そういえば、ぼくたち傘を持っていませんね。これまで雨の日は何回もあったのに」

「だって傘差すのめんどうですし……」

「ほんと、めんどくさがり屋さんですねぇ」

「そういう魔王さんも、傘を買うそぶりを見せませんよね」

「傘を差すと遠くなってしまうので」

「なにがです?」

「ふふふ。いえいえ、お気になさらず」

「燃料や食料のいらない、文句を言うこともない、ただ主人を運ぶことだけを使命に動く下僕がほしいです」

「傀儡が該当しますが……。勇者さんにはちょっと」

「大きくてもふもふした獣とかに乗るのも憧れます。枕にもなるし、布団にもなる」

「ファンタジーなことをおしゃいますねぇ」

「似合わないセリフだ……。頭が混乱する」

「でも、なんだかんだで休憩したら歩き出すんですから。偉いですね、勇者さん」

「言い方とまなざしが……。私のことを赤子かなにかだとお思いですか」

「ぼくからしたらみんな赤子です」

「そうでした、ロリババアですもんね。魔王さんこそ、足腰はだいじょうぶですか? 年齢的に骨が砕け散ってもいいと思うんですが」

「敬老の精神が感じられない問い方ですね。安心してください。ぼくは飛べますから」

「……そうでしたね。くそったれめ」

「勇者さん、言葉」

「そういえば、魔王さんって飛べるくせにふだんは徒歩ですよね。なぜです?」

「浮くと足腰を使わないので、衰えが速いんですよ」

「意外とまともな理由なんですね」

「移動手段はいろいろありますけど、若さのためには歩くことが大切なんです」

「うーん、あんまり説得力がないですね。足腰が完全に使い物にならなくなったとしても、常に浮いていれば問題ないと思うのですが」

「長く生きていると、次第に地に足つけて生きていきたいと思うものなんですよ」

「深そうに思えて特に意味のなさそうな発言ですね」

「ひどい……。年長者の威厳を感じませんでした?」

「ご自分の行動、発言を振り返ってから言ってください。ていうか、浮いている方が神秘的な感じがする気がします。不思議感、神の使い感、聖女感などなど」

「ぼく、魔王ですけどね」

「たまに私ですら忘れそうになりますよ」

「移動手段は技術が発達した場所や魔法が発達した場所によって住人たちの使用手段が違うのもおもしろいですよね。ところで、勇者さんにおすすめの移動手段があるのですが」

「聞きましょう」

「車というものです。燃料を消費して地面を走る機械ですよ」

「ふうん。知らないのでコメントのしようがないです」

「車を使って移動することをドライブというのですが、どうでしょう、一度?」

「歩くよりラクそうなのでいいですよ。ちなみに、操作などは?」

「一定年齢に達した人が試験を受け、突破すると免許を取得できます。車の運転には免許がないとできません」

「そんなもの持ってませんよ」

「……ふふふ。これをご覧ください。バアアアン!」

「セルフ効果音ありがとうございます。それは、免許とやらですか。持ってるんですね」

「自動車学校なる場所に通って取得しました。正規方法です。更新もしています」

「魔王のくせに律儀ですね。法律を遵守する魔王とか解釈違――」

「これがあればいつでも車に乗れますよ! ドライブです!」

「運転していただけるなら私は享受するだけですからね。それはそうと、その車とやらはどこにあるんです?」

「ぼくたちの行く先は決まっていないのでレンタカーは厳しいですね。となると、購入するしかありません」

「ちなみに、おいくらです?」

「しばらくご飯がもやしだけになるくらいでしょうか」

「徒歩でいいです」

「冗談ですよう。ぼくの貯金はそんなことでは尽きません」

「どんだけ持ってんだ」

お読みいただきありがとうございました。

自動車学校には偽名で通ったそうです。


魔王「『林鬼 いちご』という名前ですよ。かわいいでしょう?」

勇者「…………」

魔王「なんですか、その顔」

勇者「いえ……別に……なんでも……」

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