478.会話 両親の話
本日もこんばんは。
両親という概念についてのSSです。
「ひとりで歩いていたら、親はどこかと訊かれたので逃げてきました」
「すみません、ぼくがいなかったせいで」
「魔王さんは私の親ではありませんけど」
「勇者さんがお望みならば、この魔王、母にも父にもなりましょう」
「母の魔王さんはどんな感じなんですか?」
「今日の夕飯はハンバーグとコーンポタージュですよ~」
「いつもの魔王さんじゃないですか」
「お待ちください。真骨頂を発揮するのはお父さんです」
「父魔王さんは想像がつきません。ぜひ見せてください」
「うちの娘はやらん! くらえ、ちゃぶ台返し!」
「ネタが古いな」
「ぼくの中では最新版なのですが」
「これだからロリババア魔王は」
「出た。お口の悪い勇者さん」
「魔族の親みたいな魔王さんが私の親になるなら、私も魔族になってしまいますよ」
「そんな世界は求めてない」
「では、どんな世界を求めているのですか」
「そうですね、ぼくとしてはすべての人間の親になりたいと思いますよ」
「この世の理が変わっちゃう」
「愛しい人間たちを包み込む愛情の存在、それがぼくです」
「何もかもが間違い」
「この気持ちだけは本物です」
「慈悲深い顔だなぁ」
「うまれつきです」
「変化魔法で創った顔でしょう」
「ヒト型のぼくがうまれた時の顔ということです」
「ややこしいですね。魔王としてうまれた時の顔はどんなものなのですか?」
「顔という概念はありませんでした」
「顔という概念」
「形のない存在でしたからね」
「魔王っぽいですね」
「この程度で魔王っぽいとか言われたくありませんよう」
「すみません、普段がぽくなさすぎて」
「変化魔法を使っても魔王っぽいなんて言わないじゃないですか」
「魔法なら魔法使いも使えるものだからでしょうか」
「勇者さんの認識としては、魔法使いは魔法を使えるただの人間ということですね」
「他に何があるんですか?」
「いえいえ。いいことだと思いますよ」
「それでは、魔王さんの両親は雑草と石ころという結論でよろしいでしょうか?」
「ぼくたち、実は別の会話をしていたのでしょうか」
「草は新たな命を芽吹かせ、石は大地を形作るのです」
「それっぽいことを言っている」
「まさに創造神ですよ。おめでとうございます」
「ぼくは神様になりたくありませんよ」
「私もです。くそったれです」
「勇者さんのようなか弱き存在はぼくのようなひとの庇護下にいるとよいでしょう」
「大きな木の陰がいいなぁ」
「お昼寝の話をしているのではありませんよ?」
「包まれて眠りたい」
「僭越ながら、ぼくにその役目を!」
「まあ、お布団が最高なんですけど」
「このままではお布団が勇者さんの親になりますよ」
「お布団は母です」
「では、父は?」
「こたつかな」
「似ている」
「なにいってんですか。テーブル部分の強さは父のものです」
「物理的」
「己の身をもって敵をなぎ倒します。こたつ板返しです」
「新しい技」
「敵がぬくぬくしようものなら、温度を百度に上げるでしょう」
「違法こたつじゃないですか」
「怒りで熱くなるんですよ」
「強いお父さんですねぇ。そうなると、お母さんはただのお布団ですね」
「なーにいってんですか。母も強いですよ」
「ふわふわのお布団にできる技ってなんでしょうか」
「絞め殺す」
「物騒な両親ですね」
「窒息死も可能」
「殺し屋なの?」
お読みいただきありがとうございました。
幽霊からも守ってくれるおふとんバリア。
魔王「もっと穏やかな話だと思ったのですが」
勇者「魔王さんだって、たまに殺気立っているじゃないですか」
魔王「保護者として、勇者さんを守る義務がありますから」
勇者「すべてが間違っている一文ですね」