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477.会話 行き止まりの話

本日もこんばんは。

旅人ならば行き止まりのひとつやふたつや二百は日常茶飯事です。

「あれ、行き止まりですね」

「そのようですね。もと来た道を戻りましょう。分かれ道があったはずです」

「私たちの旅はここで終わりです」

「えっ」

「行き止まりですからね。これ以上、旅を続けることができません」

「い、いえ、戻れば別の道がありますので」

「悲しいですね。旅はおしまいです」

「えっ、えっ」

「泣くなら今のうちですよ」

「ま、待ってください! 壁ならぼくがぶち壊しますからぁ!」

「こぶしにパワーをこめないでください」

「マオハメハを撃ちます」

「ギリギリアウトかな」

「ぼくまだ『魔王っぽい勇者と勇者っぽい魔王』やれます。やらしてください!」

「タイトルをフルで言わないでください」

「では、『魔王と勇者』にしますので」

「当たり障りのないタイトルになっちゃう」

「勇者さん、ご存知ですか? 壁は壊すためにあるのですよ」

「『越える』の間違いではないでしょうか」

「だって、勇者さんは浮遊魔法が使えないでしょう?」

「私に基礎魔法などありません」

「ぼくが手を取って飛ぼうと思っても」

「触らないでください」

「ええん」

「そもそも、行き止まりを壁だと思っているのが間違いなのです」

「いま、ぼくたちの目の前にあるものは、まさに壁なのですが」

「硬すぎる茨の道というバージョンもあるはずです」

「バージョン」

「行き止まりは種類があった方が楽しいと思うのです」

「なるべく行き止まりはない方が危険は少ないと思います」

「たまには行き止まってみたいじゃないですか」

「行き止まってみたいんですか?」

「壁にぶち当たる魔王さんが見たいです」

「当たるのはぼくなんですね」

「陥没する壁」

「物理的な衝突なんですね」

「そのまま壊して進んでいく魔王さんを見てドン引きしたいです」

「定期的に真顔でドン引きする勇者さんがいますよね」

「そういえば魔王だったな、と」

「そこにドン引きするんですか?」

「脳が混乱して、体の制御がうまくいかず、壁に突撃してしまいそうです」

「危険なのでやめてくださいね」

「おでこぶちました」

「んもう!」

「倒れ込んだ先にお布団があれば、それはすてきなことだと思いませんか?」

「まさかと思いますが、お昼寝を希望している表現ではありませんよね?」

「行き止まりですし、道を戻るのもめんどうですし、ちょっと寝ようかと」

「道の真ん中でお昼寝はおやめください」

「誰かが来る気配はありませんよ」

「誰も来ないような場所だからこそ、危険があるのです」

「えー。人間が一番こわいですよ」

「妙な説得力を感じる」

「静かで、少し暗くて、ほどよい気温で、お昼寝に最適です」

「あ、魔物」

「放っておけばいいじゃないですか。襲われる対象の人間はいないんですし」

「勇者さんってなんでしたっけ」

「人間だったかなぁ?」

「疑問を抱くまでもなく人間ですよ」

「とすると、魔物は私を襲いにきますね」

「そうですね。しかもここは行き止まり。逃げ場がありませんよ」

「困りましたね。もう眠くて動けません」

「やる気がないだけですよね?」

「やる気なんていつもありませんよ」

「それもそうでした」

「そうだ、行き止まりを作っている壁を利用しましょう」

「壁の前に立って、何をするのですか?」

「タイミングよく魔物を避け、壁に当てるのです」

「闘牛かな」

「壁も壊れて行き止まりは行き止まりではなくなる。これが道の切り開き方ですよ」

「たまに破壊神なんですよね、きみ」

お読みいただきありがとうございました。

破壊神勇者さん、似合う。


勇者「爆弾でどかん」

魔王「環境破壊ですよ」

勇者「魔王のくせに自然を労わるのですか」

魔王「人間も自然の一部ですから」

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