474.会話 ミステリーサークルの話
本日もこんばんは。
「気になるよね~?」(CV勇者さん)
「怪しい……。怪しいですね……」
「地面に這いつくばる勇者さんの方が怪しいですよ」
「勇者のふりをした魔王の方が怪しいと思いますが」
「そうですねぇ。どの口がおっしゃっているのですか?」
「ところでこれ、魔王さんの仕業ですか?」
「なにがです?」
「たんぼの一部が円形になっていることです。農家さんに迷惑かけちゃだめですよ」
「濡れ衣です」
「他にだれがいるんですか」
「ぼくでなければ勇者さんとか」
「そうですね。んなわけないでしょう。寝言は寝て言ってください」
「起きていますよ。これはミステリーサークルといわれるものですね。様々な説がありますが、一説には宇宙人やら魔術やらオカルト、そして幽霊によるものだとか」
「幽っ………………」
「とはいえ、今では魔法使いによるものだったと判明しています」
「幽霊…………」
「すべて人為的なものだったということですね」
「幽……霊……」
「勇者さん?」
「幽霊なんて、そんなわけないでしょう!」
「はい。ですから、人間によるものだったと先ほどから」
「そりゃ、生前は人間だったんだから当たり前ですよ」
「いえ、死んでいませんよ」
「死ななくてもポルターガイスト現象を引き起こせるんですか?」
「いえ、魔法によるものです」
「幽霊による魔法……?」
「勇者さん、落ち着いてください。魔法使いによる魔法です」
「なるほど。魔法による幽霊の魔法使いがミステリーサークルの形なんですね」
「勇者さん、落ち着いてくださいね」
「何のために作るんですか?」
「いたずらだったといわれています」
「なんですかそれ。魔王さんじゃないんですから」
「そうですねぇ。どの口がおっしゃっているのですか?」
「私がいたずらで巨大な円形を作ると思いますか?」
「すごく思います」
「まあ、ちょっと興味はありますけども」
「ほらぁ」
「お昼寝にちょうどいいかなって」
「草のベッドですか。うさぎさんですか?」
「寝ながら食べてもいいですもんね」
「すぐ草を食べようとする」
「許可が取れたら私たちも作ってみませんか?」
「許可は取るんですね。いい子の勇者さんが出ています」
「草のベッドを作ってもいいですかって」
「そこはミステリーサークルって言いましょうよ」
「ミステリーベッド」
「事件が起こりそう」
「ある朝、ミステリーベッドには真っ赤に染まった魔王さんの姿が……!」
「被害者、ぼくなんですね」
「ケチャップをぶちまけたことで落ち込んだ魔王さんがふて寝していたそうです」
「たまに力加減を間違えるんですよね」
「泣きながら片づけをしている魔王さんは幻覚かと思っていたのですが」
「現実ですよ」
「入口に立ち入り禁止って書いてあるのは」
「現実ですよ。勇者さんまで汚れてしまいますからね」
「まあ、ケチャップまみれは嫌ですけど」
「ぼくの力をもってすれば、ミステリーベッドの一つや二つ簡単です」
「サークルサークル」
「おっと、ミステリーサークルの二百や五百」
「多い多い」
「ちょちょいのちょいの朝飯前です」
「一つでじゅうぶんです」
「大きな円の斜め上に、少し小さめの円を二つ作ったらどうでしょう」
「三つの円ということですよね。……ん? どこかで見た形になるような……」
「とある国ではよく見られる形ですね」
「それ以上はだめですよ」
「楽しいと思うのですが」
「この世には守らねばならないルールというものがありまして」
「ぼく、魔王ですよ?」
「でも三つの円はだめです。だめですからね。こら、魔法の準備をするな!」
お読みいただきありがとうございました。
三つの円によって作られる形とは一体。夢の国。
勇者「大きな円をひとつ作ります」
魔王「ミステリーサークルですね」
勇者「その隣にはK牧――」
魔王「勇者さんストップ」