473.会話 オムライスの話
本日もこんばんは。
気を抜くとすぐ食べ物の話をする作品はこちらです。
「今日の夕飯はオムライスにしますので、ケチャップをどうぞ」
「どうすればよいのですか?」
「せっかくですし、楽しく食べたいでしょう。というわけで、ケチャップでオムライスに文字を書こうゲームをします」
「ゲームですか」
「難しいことはありません。ただ好きな言葉を書けばいいのですよ」
「好きな言葉……」
「名前でもいいですよ」
「魔王さんは何を書く――あ、待った、今のナシでお願いします」
「ぼくですか? もちろん『勇者さん愛』ですけど」
「訊かなきゃよかった」
「勇者さんもどうぞ。ぜひ、『魔王さんびっぐらぶ』とお書きください」
「遠慮します」
「いいんですよ、遠慮しなくて」
「好きな言葉かぁ。やっぱり『サメ』とか」
「ぼくはサメに負けるんですか?」
「いつも隣にいる『ミソラ』でもいいですね」
「ぼくも隣にいますよ」
「私の食事時間を見守ってくれています」
「ぼくも見ていますよ」
「『オム』でもいいかな」
「オム……?」
「ライスはここにあるので」
「分断するだけで別物感が凄まじいですね」
「ちょっと強そうに感じます」
「オムッ‼ ということでしょうか」
「そうです」
「わかるような、わからないような」
「オムッ、オムッ、ふふっ」
「勇者さんが楽しそうでかわいいのでなんでもいいやぁ」
「見てください、魔王さん。小さくうさぎさんの絵も描いてみました」
「リボンをつけていますね。ミソラさんですか?」
「よくわかりましたね。その通りです」
「ケチャップでよく描けましたね。さすが器用な勇者さんです」
「……えへ」
「はあああああもうかわいいんだけどなに? どういうこと?」
「あれ、ちょっと待ってください。もしかしてこれはオムライスですか?」
「もしかしなくても最初からオムライスでしたよ」
「つまり、食べる?」
「そうですよ。夕飯ですからね」
「ミソラの絵をなかったことにするんですか?」
「ケチャップで描いていますからね。なくなる運命ですよ」
「なんてひどいことを。魔王さんはそれをゲームだと言うのですね」
「ミソラさんを描いたのは勇者さんですからね?」
「恐ろしいゲームを生み出したものですね」
「食べる前提で描かなくてはいけませんよ」
「そう言う魔王さんが書いたのは……ハッ」
「ですから、文字も絵もいずれは食べてしまうので、気持ちの問題という話で――」
「私を食べるのですか」
「待ってください。それの表現は誤解を招くので訂正してください」
「だってオムライスに『勇者さん』って」
「そうですけど。そうなんですけどね」
「私、間違ったこと言いました?」
「何も間違えていません。ただ、誰かが勘違いしないためにお願いします」
「よくわからない……」
「さ、さて、冷める前にオムライスを食べましょうね」
「ミソラに謝ってから食べます」
「律儀ですねぇ」
「お花も描いてあげようっと」
「すてきですねぇ」
「星も描こう」
「きれいですねぇ」
「待ってください。星もなかったことにするんですか?」
「勇者さん、記憶喪失ですか?」
「なんてひどいことを」
「遊んでますよね?」
「……ふふ」
「んもう。ほら、温かいうちに食べてくださいね」
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
お読みいただきありがとうございました。
食べ物SSだけで365日書けそうな気がします。
勇者「魔法陣を描いてみました」
魔王「器用にも程がある」
勇者「これでも発動しますかね?」
魔王「未知すぎてぼくにもわかりません」