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472.会話 おはぎの話

本日もこんばんは。

言葉のすれ違いはコメディになる。そんなお話。

「勇者さん、半殺しと皆殺しならどちらがいいですか?」

「…………」

「どうしました? ぴたっと固まって」

「……まさか、魔王さんからそんなことを訊かれるとは思わなくて」

「えっ、そんな不思議なこと言いました?」

「あなたの方から旅を終わらせるようなことを言われるとは」

「えっ、えっ、旅? どういうことです? ぼくたちの旅、終わるんですか⁉」

「あなたがそう言ったんでしょう」

「言ってませんよ。半殺しか皆殺しか選んでほしいだけです」

「私には半殺しの選択などないでしょう」

「では、皆殺しでよろしいですか?」

「いいですよ。そもそも、そういう約束でしょう」

「え、半殺しもおいしいですよ?」

「魔王さんに痛めつける趣味があるとは思いませんでした。やっぱり魔王ですね」

「痛めつけるもなにも、潰さないといけませんし」

「私、潰されて殺されるんですか。……痛そうだなぁ」

「ちょっと待ってください。潰されて殺される? 誰にですか?」

「だから、魔王さんに」

「そんなことしませんよ⁉ さっきから何の話をしているんですか、勇者さん」

「それはこちらのセリフです。もう少しシチュエーションを整えてから話してください」

「シチュエーションもなにも、おはぎを作るのに雰囲気なんてありましたっけ……?」

「……おはぎ?」

「そうです」

「おは……ぎ……?」

「そうですよ」

「…………?」

「…………?」

「だって、半殺しって……。えっ?」

「……あーっ! そういう! そういうこと! ごめんなさいぼくが言葉足らずで!」

「えっと……、どういうことですか?」

「半殺しっていうのは、もち米の粒が半分くらい残る程度に潰すことで、皆殺しは粒を完全に潰したものを指す料理用語なんです。おはぎを作ろうと思ったので、勇者さんの好みはどっちかと訊いただけなのですよ」

「りょ、料理用語……なんですか」

「そうですそうです。決して勇者さんの殺し方について訊いたわけではありません」

「……ちょっとびっくりしちゃった」

「殺さないので縮こまらないでくださいぃぃ!」

「殺さないのは困ります。約束ですよ」

「あっ、ええと、今ではないという話でして、ああぅ、お、おはぎ食べます⁉」

「食べます。ところで、おはぎってなんですか?」

「もち米を丸め、あんこで包んだものです。きな粉をまぶして食べてもいいですよ」

「おいしそうですね」

「たまに、無性に食べたくなるんですよねぇ。田舎のおばあさん家を思い出して」

「ご自分が特大おばあさんのくせに」

「ぼくのことを迷子だと思った優しいおばあさんが作ってくれたおはぎがおいしくて」

「人間社会に馴染んでいますね」

「縁側で食べたおはぎと淹れてくれたお茶の味が忘れられません」

「平和だなぁ」

「というわけで、ぼくにとっては優しさと平和の味なのですよ」

「物騒な表現とは正反対ですね」

「おばあさんがにこにこしながら皆殺しのコツを教えてくれました」

「勘違いまっしぐら」

「半殺しより皆殺し派の方でした」

「軽率に過去を妄想しちゃうのでやめてください」

「勇者さんの腕の見せ所ですよ」

「魔王さんはおはぎでも作っていてください」

「たくさん皆殺してきますね」

「すごい。魔王みたいな発言がこんなところで」

「腕がなりますね!」

「おはぎを作れば誰でも魔王になれるんですね」

「せっかくですし、勇者さんも半殺ししてみます?」

「犯罪に誘われている気分」

「結構楽しいですよ、潰すの」

「すてきな笑顔で言わないでほしい」

「とびっきりおいしいおはぎを作りましょうね」

「裏の意味があるのかと勘ぐってしまいます」

「おはぎ以外の意味はありませんよ?」

「わかっていますけど、どうにもイメージが……」

「なんだかお疲れですね。では、潰すのはぼくがやりますので勇者さんは仕上げを」

「もうだめだ。全部そういう意味に聞こえる」

お読みいただきありがとうございました。

仕上げはばっちりの勇者さん。


勇者「物騒な料理用語があるんですね」

魔王「そうですねぇ」

勇者「そもそも、包丁やフライパンといった料理道具が物騒ですよね」

魔王「そうですねぇ。……フライパン?」

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